公証役場で作成する遺言書 普通方式②公正証書遺言について(前半)

2024年3月21日

プロローグ

普通方式の遺言書作成には3つの方法があり、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

法務省の調査では、遺言書を作成したことがある人で公正証書遺言を作成したことがある人は3.1%となっています。

年齢が高くなるほど公正証書遺言を作成したことがあるという人は増加し、75歳以上になると5.0%の人が作成したことがあるという回答をしているという結果があります。

遺言書の作成を検討している人は年々増加傾向にあります。

 

今回は普通方式の遺言のうち、公正証書遺言について前半・後半に分けて解説していきます。

 

公正証書遺言とは?

 

公正証書遺言は自筆で作成する自筆証書遺言とは異なり、公証人と証人2名以上が立ち合い公証役場で作成する遺言書です。(公証人が出張して作成する場合もあります)

遺言者(遺言を残したい人)は、まず公証人に遺言内容を伝え、公証人は遺言者から聞いた内容で遺言書を作成します。

公正証書遺言は、自分一人で作成する自筆証書遺言に比べ、公証人や証人が関わっていますので不備や、偽造や変造・破棄の心配もなく遺言が無効になるリスクはありません。

「公正証書遺言」は作成費用がかかりますが、遺言書を残す方法としては一番安全な遺言の形式といえるでしょう。

そのため、公正証書遺言を選択する人は年々増加しています。

また、民法969条公正証書遺言の条文の4には「遺言者が公正証書に署名できない場合、公証人がその事由を付け加え署名に代えることができる」とあります。

これに加え1999年には民法969の2が新設され、言語や聴覚に障害がある人に対しても公正証書遺言が作成できるよう改正が行われました。

これにより公証人の面前で遺言の趣旨を自著する「筆談方式」や、手話通訳士や証人となる人の2人以上の立ち合いのもと「手話通訳方式」というカタチで公正証書遺言を作成することが認められています。

補足

公証役場………公証人が執務する事務所のこと。

公証人………公証人は、裁判官、検察官、法務事務官等を長く務めた、法律実務の経験豊かな者の中から法務大臣から任免され、国の公務をつかさどる人。

公正証書………公証人が個人や法人から嘱託された内容をもとに作成した文書(つまり公文書)のことです。

 

ある特定の誰かに対して、スムーズに問題なく遺産を渡したい、自分の気持ちをすべて、きちんと文書でまとめつつ残したいという人は、公正証書遺言を作成することをお勧めします。

 

遺言書についての解説、自筆証書遺言、秘密証書遺言の解説についてはコチラをご参考下さい。↓

リンク:(法的な効力を持った書類「遺言書とは」)

リンク:(自分で作成する遺言方法 普通方式①自筆証書遺言について)

リンク:(内容を秘密にしておきたい場合の遺言方法 普通方式③「秘密証書遺言」メリットと注意点)

 

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言は、公正役場で保管される「原本」、遺言者に交付される「正本」「謄本」の合計3部が作成されます。

では、実際に公正証書遺言を作成するとなった場合、どういった作成手順で進めていくのかをみていきましょう。

 

①遺言者は遺言内容を考え原案を作成する。(メモでも可)

主な相続財産や相続人の氏名、財産の遺し方などを具体的に書き記しておきます。

 

②公証役場に連絡し相談日時を予約する。

この時、予め準備が必要な書類などを伝えられます。

また、原案に記した内容を公証人に伝え相談することも可能です。(相談料は無料)

 

③相続内容と必要書類の提出

作成した遺言内容を持参またはメール、FAX、郵送などで提出します。

準備した必要書類も提出しましょう。

 

④証人2名以上の依頼

公正証書遺言を完成するには2名以上の証人が必要になります。

知人に依頼することも可能ですし、公証役場に紹介を依頼することも可能です。

※公証役場で証人を紹介してもらう場合別途謝礼が必要です。

 

⑤公正証書遺言の作成と修正

公証人は、提出した遺言内容や書類を基に公正証書遺言を作成し、メールなどで遺言者に提示します。

修正箇所や取消したい箇所があった場合は公証人に伝え、修正してもらいます。

 

⑥公正証書遺言の作成日時の決定

遺言内容が確定した場合、公正証書遺言の作成日時を決めなければなりません。

公証人、証人2名以上、遺言者の予定が合う日を平日で設け日時を設定します。

 

⑦作成当日

作成当日は遺言者と証人2名以上で公証役場に向かいます。

全員が揃ったら、公証人が遺言の内容を読み上げ、遺言の内容が間違っていなければ遺言者(実印)、証人2名以上(認印)、公証人が署名・押印し公正証書遺言は完成となります。

※内容が間違っていた場合は修正してもらいます。

 

⑧手数料の支払い

公正証書遺言が完成したら、正本と謄本を受け取り公証人の手数料を現金で支払い終了となります。

※証人2名以上には欠格事由があります。

未成年者、推定相続人および受遺者、配偶者、直系血族、4親等内の親族、公証人の配偶者、書記や使用人などは遺言の証人または立会人になることができません。

 

公正証書遺言の完成までの日数は通常2~3週間程度です。

相続人の人数や財産の内容等様々なケースによって作成にかかる日数は異なってきます。

相続の内容を調整するために、余分に時間を要することになってしまったケースや、日程調整の都合によっては、1か月以上かかってしまう場合もあります。

できるだけ時間的に余裕を持ち作成しましょう。

 

公正証書遺言を作成するのに必要な書類

※印鑑登録証明書や登記簿謄本等は、遺言作成日よりも前3か月以内のものになります。

※公証役場や遺言の内容によって準備する書類などが異なる場合がありますので、あらかじめ公証役場に確認しておきましょう。

 

公正証書遺言の作成にかかる費用

公正証書遺言を作成する際は、公証役場の手数料と証人への日当が発生します。

また、専門家(弁護士・司法書士等)を証人立てた場合も別途費用が発生します。

 

公正役場に支払う手数料

公正証書遺言を作成する場合、公証役場に作成手数料を支払うことになっています。

この手数料というのは法律により決められており、全国の公証役場において基本的には統一の料金となっています。

手数料は公正証書に記載する財産の金額により変わります。

1億円超え、3億円まで5,000万円ごとに13,000円が加算されます。

3億円を超え10億円まで5,000万円ごとに11,000円が加算されます。

10億を超えた場合、5,000万円ごとに8,000円が加算されます。

※基本手数料は財産を承継する人ごとに計算、また合計します。

財産の総額が1億円未満の場合は、1万1,000円が加算されます。

 

この料金表をもとに以下の方法で算出します

費用の算出例

上記のように、財産額や遺言の内容により公正証書の作成費用は変動します。

 

また、遺言の内容に応じて戸籍謄本などの必要な書類を公証役場へ提出しなければなりません。

書類別の費用は以下の通りです。

公証人の出張

遺言者が体調不良などで公証役場に来られない場合は公証人に出張依頼することが可能です。(自宅や病院、施設など)

但し、出張を依頼する場合は別途出張費用が発生します。

・公正証書遺言の作成手数料:基本手数料の1.5倍

・公証人の日当:1日20,000円(4時間以内の場合は10,000万円)

・公証人の交通費

 

証人への日当

公正証書遺言の作成する際には、証人2名以上の立ち合いが必要です。

証人を司法書士などの専門家もしくは、公証役場に依頼した場合は1名につき7,000円~15,000円程度の日当を支払うことになります。

※ご自身で知人などに証人を依頼した場合はこの限りではありません。

 

公正証書遺言を専門家に依頼する場合

 

公正証書遺言の作成を専門家(弁護士・司法書士等)に依頼する場合も、公証役場に依頼する場合と変わりはありませんが、遺言書の作成や、公証人との打ち合わせなどがスムーズになります。

また、証人2名のうち1名は専門家が引き受けてくれます。

 

専門家に依頼した場合の費用

公正証書の作成を専門家(弁護士・司法書士・行政書士)に依頼した場合の費用は、財産額や遺言の内容、証人の準備などの付帯サービスによって変動しますが、おおよそ10万円~25万円程度です。

 

前半では、公正証書遺言の作成手順や費用について説明しました。

後半では、公正証書遺言のメリットと注意点について解説していきます。

後半へ続く

 

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