遺言書⑤ 秘密証書遺言

2021年9月15日

秘密証書遺言とは

密証書遺言は公証人と証人二人以上に遺言書の「存在」の証明をしてもらいながら、公証人、証人、相続人を含め、本人以外は内容を見ることができませんので、遺言内容を「秘密」にすることができる遺言書です。
遺言者の死後、遺言書が発見されないということを防げます。
なおかつ遺言の内容を秘密に出来るのが、秘密証書遺言の特徴です。
ただし、秘密証書遺言は、ほかの遺言の方法に比べると、たいへん手間がかかり、記載したことに不備があった場合は、無効になってしまい、確実性という点においては欠けるので、利用は年間で100件程度と少ないです。
また、手数料として11,000円がかかります。
遺言書を公証役場に持って行くことで作成できます。

しかし、過去の法改正により、秘密証書遺言を利用する利点が失われてしまったため、用いられることがたいへん少ない遺言の方法となってしまっているというのが現状です。

 

秘密証書遺言書の作成方法

下記はおおまかに手順を図にしたものです。

ここからはさらに詳細を見ていきます。

▼手書きもしくはパソコンで遺言内容を書く
秘密証書遺言は、遺言者の自筆の署名と押印がされているのであれば、他の内容は、手書きやパソコンや代筆などで記載しても大丈夫です。
押印のときの印鑑は、認印を使用することが可能です。
使用する紙やペンなどにきまりはありません。

▼遺言書を封筒に入れて封をしてから押印する
遺言書が書けましたら、そのまま封筒に入れて封をしてください。その後、遺言書に利用した印鑑と同じもので封に押印します。もし、この印鑑が遺言書に押印したものと異なる場合、遺言が無効になってしまうので注意してください。

▼二人の証人と一緒に公証役場に遺言書を持って行く
二人の証人※と一緒に、作成した遺言書を、遺言者の住所地を管轄する公証役場へ持って行きます。
公証人と二人の証人の前でその遺言書を提示してください。
そして、自分の遺言書だということを証明するために、氏名と住所を申述してください。
すでに封をされた状態で公証役場に持っていくため、公証人や証人となる人に中身を見られてしまうことはありません。

※証人になれない方もいますので注意が必要です。
相続人となる人
未婚の未成年者
受遺者およびその配偶者と直系の家族
秘密証書遺言の作成を担当することになっている公証人の配偶者と4親等内の親族
公証役場の関係者

これらの方は証人になることができません。

▼遺言者と証人が署名と押印をする
公証人が遺言書を提出した日にちと、遺言を書いた人の申述を封紙に記入します。
その封紙に遺言を書いた人と二人の証人が署名押印したら秘密証書遺言の完成となります。
完成したあとの秘密証書遺言は、遺言者自身で保管してください。
役割として、公証役場には遺言書を作ったという記録のみが残ることになっています。

 

秘密証書遺言のメリット、デメリット

ここからはどのようなメリット、デメリットがあるのか見ていきます。

 

メリット

▼内容を秘密にできます
秘密証書遺言では、公正証書遺言作成時に行われる公証人による内容の確認がありませんので、遺言執行まで他の人に遺言の内容を知られることがありません。
一方、証人に署名をしてもらう必要があるので、遺言の存在は知っておいてもらうことができます。これにより、自筆証書遺言を遺した時によくある、「遺言があるのに気づかれない」という事態は避けることができます。

▼遺言者により書かれた遺言書かどうか確認する必要がありません
自筆遺言であれば、遺言書の存在が確認された時、その遺言書が遺言者によって記載されたものか確認する必要があります。しかし、秘密証書遺言は、遺言者本人が記載して封入しますので、遺言者本人が記載したかどうかの確認はいりません。

▼偽造や変造を防ぐことができます
秘密証書遺言を残す時は、遺言を残す人が遺言書に封をして、封印した紙に、公証人が署名します。この封が破られている、または、開かれた跡が残っている秘密証書遺言は法律上、効果が認められません。
これにより遺言書の偽造、内容の変造などを防ぐことができます。

▼パソコンや代筆でも作成することが可能です
秘密証書遺言は、パソコンで遺言書を作ったり、他の人に代筆してもらったりすることができます。
(代筆の場合、内容は知られてしまいます)
そのため、身体的な問題により、自分で書くことができないお年寄りなどはたいへん助かることになります。
しかしながら、遺言書の署名等は自筆で行なう必要があります。
また、押印も必要なので注意してください。

パソコンで作成しても大丈夫ですが、万が一、秘密証書遺言書としては不備があった場合でも、自筆証書遺言書としては効果があると判断された場合は、自筆証書遺言書として認めてもらえることがありますので可能であれば自筆で書くことをおすすめします。

 

デメリット

▼遺言書に不備が残ってしまう可能性があります
秘密証書遺言を作成する時に、公証人が遺言の内容を確認することはありません。
そのため遺言書の形式が違う、内容が不明確などの不備があった場合、無効となってしまうことがあります。

▼手続きに手間がかかってしまいます
秘密証書遺言は遺言者が自分で遺言の内容を確認していることを、公証人により認めて貰わなければいけません。
また公証人への依頼には費用や手間がかかり、確認には2人の証人による立会いが必要になります。
このように手続きには手間がかかりますが、こうした部分というのは公正証書遺言とほとんど同じ内容となっています。

▼作成する費用がかかってしまいます
比較的に、公正証書遺言よりは幾分か安いのは確かですが、秘密証書遺言を作成するためには手数料が11,000円かかります。

▼二人の証人が必要となっています
この秘密証書遺言の手続きを受けるときには、二人の証人が必要になります。
証人を探すのに困った時は、公証役場に相談すれば手配してくれます。

▼紛失してしまう可能性があります
秘密証書遺言は公証人に確認をしてもらい、作成した記録は公証役場に残ることになっていますが、遺言書本体の管理は自分でしなければいけないので、無くしてしまうおそれがあります。
もしも紛失してしまったとしたら、作成に費やした労力とお金が、すべて無駄になってしまうので、ここは要注意です。

▼遺言の確認には家庭裁判所の検認が必要
遺言者が亡くなったあと、すぐに秘密証書遺言の中身を確認するといったことはできません。
家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
秘密証書遺言では、内容が遺言書について法律で定められている型で記載されているかどうかを確認してもらう必要があります。
そのために家庭裁判所の検認を受けます。
検認には一定の手間や時間が必要になりますので、その期間は待たなければいけません。

秘密証書遺言を作成する時に注意すること

▼相続の意向を明確にしてください
正しい方法で書くよう心掛けてください。法定相続人に対しては相続させる、法定相続人以外の人に対しては遺贈すると書くのが正しいです。

▼財産は特定して書いてください
財産を記載するときは詳しく、正しく書いてください。
(例)
株式→銘柄や株数を間違いなく記入する
預貯金→銀行名、支店名、口座の種類、口座番号などを記入する
不動産→登記簿の記載を間違いないように記入する

▼全ての財産の相続者を指定してください
遺言を残す人の財産の取り分等を、相続人同士が揉めることがないよう、全ての相続財産の継承者を必ず指定してください。

▼借入金の負担者となる方をまずは指定してください
もしも、相続する財産に借入金などの負債がある場合には、その負債の負担者についても指定して書いてください。当該指定は債権者との関係では当然には有効ではないです。
しかし、相続税負担の計算で重要となる場合もあります。

▼遺言執行者を指定してください
遺言内容の遂行をスムーズにするため、遺言執行者を遺言で指定してください。指定するには住所と氏名を明記する必要があります。

▼付言事項にて遺言者の想いのたけを記す
生じてくる相続財産の分配する比率の理由について、また遺言者が葬式の方法、さらに亡くなったことを誰に知らせて欲しいのかなどについて、秘密証書遺言というカタチで残した理由などを書き添えることができます。
付言事項に法的拘束力はありませんが、遺族にとっては亡くなった人の想いが知れる大切な記載内容となるはずです。

 

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