自分で作成する遺言方法 普通方式①自筆証書遺言について

2024年2月21日

プロローグ

 

法務省の調査では、55歳以上の人で自筆遺言書を作成したことがある人は3.7%という統計があります。

年齢が高くなるほど遺言書を作成する人は増え、75歳以上では6.4%の人が遺言書を作成したことがあると回答しています。

昨今では年齢に関係なく、円満な相続のため、自分の想いを伝えるために遺言書を遺す人は増加傾向にあります。

遺言の普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの方法がありますが、身近な遺言方法として自筆証書遺言を作成される方も多いのではないでしょうか。

今回は、自筆証書遺言について書き方や保管方法などを解説していきます。

 

遺言書についての詳細はコチラをご参考下さい。↓

リンク:(法的な効力を持った書類 遺言書とは)

 

 

遺言を遺す意味

 

遺言は被相続人(自分)の意思を伝える最期の意思表示です。

遺言を遺すほとんどの人は「自分が遺した財産でトラブルになってほしくない」、「確実に相続したい人に渡したい」など、遺された相続人がトラブルなく円満に相続できるように遺言書というカタチで想いを伝えます。

 

 

自筆証書遺言とは

 

自筆証書遺言は自分の一存で遺言書を作成・保管できるため、遺言の内容を誰にも知られることなく特別な手続きの必要もないため遺言方法として気軽に利用できます。

紙とペンがあれば簡単に作成できますので、費用や手間もかからず遺言書を遺すことができる方法といえるでしょう。

しかし、民法に定められた要件に満たない場合や、代筆などは無効となる場合もあり、大切に保管していた遺言書が発見されない、紛失してしまった、盗難などのリスクもあります。

 

民法968条では、自筆の遺言をする場合は「遺言者がその全文、日付、ならびに氏名を自著し、これに印を押さなければならない」とあります。

つまり、遺言書の全てを自分で書き記し押印しなければならないということです。

この主な理由は、遺言書の偽造等を防ぐためです。

但し、2019年の法改正により自筆証書遺言の一部である財産目録については、パソコンでも作成できるように改正されました。

※パソコンで作成して印刷した財産目録には必ず署名押印が必要です。

また、財産目録は作らず、預貯金通帳等のコピーを財産目録として添付することも認められるようになっています。

 

自筆証書遺言の記入例とポイント・注意点

一般的に上記のような形式になります。縦書き、横書きのどちらでも可能です。

 

大切なのは、誰が、何を、どのくらい相続するかという部分ですが、注意しなければならない点もあります。

遺言書を作成する時は、法定相続分や遺留分を侵害していないかなどに注意して作成しましょう。

特に、遺留分を考えずに遺言書を作成した場合、相続人の間で揉めてしまう原因となる可能性が非常に高いです。

また、不動産や土地など分けにくい財産の分け方までしっかり記載するとより良い遺言書になるでしょう。

 

遺言書作成のポイント

・財産を明確にする

遺言書を作成するためには、自分の遺産がどの程度あるのか正確に把握する必要があります。

不動産の全部事項証明書や預貯金通帳、有価証券(株等)、生命保険など財産に関する資料を収集し財産を把握しましょう。

遺言は遺族にとって大きな影響力を残すものです。

遺言書に書かれていない財産があった場合、その財産を巡り争いとなってしまうケースも考えられます。

こういった事態にならないよう「財産目録」を作成しましょう。

また、相続人の「遺留分」を侵害しない範囲で遺産分割、財産の指定をすることが大切です。

 

・相続財産は正確に記載する

誰がどの財産を相続するかも重要ですが、相続人が遺言書を読んでどの財産を指しているのか分かりやすく記載することも大切です。

例えば、土地や不動産の場合「土地は名古屋一郎が相続すること」と記載しても、名古屋一郎は「どの土地」のことを指しているのか判断できないという事態も想定されます。

その結果、相続人が財産を正確に把握できず争続に発展してしまう可能性もあります。

それを避ける為にも、土地などの不動産は「登記簿」に、預貯金は「支店名や口座番号」をきちんと記載することが大切です。

 

・財産を譲りたい人を決める

遺言で遺産分割の割合や遺す財産が決まったら、財産を譲りたい人を決めます。

この時、家族や親族以外の第三者に財産を譲ることも可能です。

また、法定相続分ではなく遺産分割の割合に差をつけたいと望む場合には「遺言書に指定のない財産はすべて●●に渡す」などの記載をしておきましょう。

 

・遺言書の作成日は必ず記載する

自分がいつ遺言書を書いたのかは必ず記載してください。

日付の書き方は何でも構いませんが、第三者が見ても特定できる位置、読み方で書きましょう。

「20■■年■■月■■日」、「令和■■年■■月■■日」と日にちまで記載することが重要です。

 

・署名・押印

遺言書は、遺言者の署名と押印がないと無効になります。

戸籍に記載のある姓名を自筆、押印はシャチハタを避け実印にしましょう。

また、作成した遺言書を封入した際は必ず封印しましょう。

※自筆証書遺言の場合、特に封印がなくても問題はありませんがあった方が開けていないことの証明になりますからより安心です。

 

・共同の遺言の禁止

民法上において、遺言は「二人以上の者が同一の証書という形で作成することはできない」と規定されています。

夫婦間でも共同名義の遺言は避け、一通ずつ作成しましょう。

 

・遺言内容の訂正

遺言内容を訂正したい場合、遺言者はいつでも修正することが認められています。

該当している箇所に二重線を引き、訂正印を押印した後に訂正文を加え訂正します。

 

・遺言執行者の選任

遺言執行者とは、遺言の内容を正しく実現させるために必要な手続きを行なう人です。

基本的には、誰が遺言執行者になっても問題はありません。

相続人から選任する場合や、法律の専門家(弁護士・司法書士等)、金融機関などが遺言執行者になる場合もあります。

遺言執行者の詳細はコチラをご参考下さい。↓

リンク:(遺言執行者とは)

 

・作成した遺言書の保管

性質上、自筆証書遺言はどうしても遺族に見つけてもらう必要があります。

ですから、確実に見つけてもらうことが前提となります。

自宅の分かりやすい場所や貸金庫などに保管するか、配偶者には保管場所を伝えておくと良いでしょう。

 

 

自筆証書遺言の検認

遺言者は自筆証書遺言の作成・保管を自由に行うことができますが、遺言書を見つけた相続人は、家庭裁判所に提出し検認を請求しなければならないと決められています。

被相続人の死後に遺族が遺言書を見つけた場合、その場で自筆証書遺言を開けてしまうと5万円以下の罰金が課せられます。

 

 

自筆証書遺言保管制度

2020年7月の法改正により自筆証書遺言保管制度が創設されました。

この制度により、自筆証書遺言は法務局で適正に保管・管理され、遺言書の紛失や、遺言書の破棄、隠匿、改ざんを防ぐことができます。

また、保管制度を利用している遺言書に関しては検認手続きが不要となります。

 

詳細は法務省のホームページをご参照下さい。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

 

遺言書の検認が必要な遺言と検認の必要がない遺言

検認とは、遺言書の形式や、訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を確認し偽造などの防止をする手続きです。

また、それと同時に相続人に対し遺言書の存在と内容を知らせます。

※検認は遺言の有効や無効を判断する手続きではありませんが遺言書に不備があった場合、遺言書としては無効となる場合もあります。

検認の手続きには、検認が必要な遺言書と必要がない遺言書があります。

遺言書の検認が必要

・法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言

・秘密証書遺言

遺言書の検認が不必要

・法務局の保管制度を利用している自筆証書遺言

・公正証書遺言

遺言書の検認の詳細はコチラをご参考下さい。↓

リンク:(遺言書の捜索と遺言書の検認)

 

 

エピローグ

 

遺言の方法で最も身近な自筆証書遺言。

2020年7月の法改正で創設された自筆証書遺言保管制度で、これまで保管場所の確保や紛失、変造、破棄といったリスクが軽減されますます身近なものになりました。

また、自筆証書遺言保管制度を利用する人は検認手続きも不要となり相続人にとっても煩わしい手続きがなく、直ぐに遺産分割手続きに入れるため利点となります。

しかし、身近なものになったといっても、やはり自分で遺言書を作成するのは抵抗がある、不安があるという方は法律の専門家である(司法書士・弁護士等)に相談することも可能ですので、分からない点などあった場合は専門家に相談しながら作成しましょう。

 

 

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