相続トラブルの対処法について

2021年10月27日

プロローグ

親の相続をきっかけに遺産分割について兄弟姉妹でトラブルが起き、これまで仲が良かったのに良好な関係が壊れてしまうことがあります。
トラブルが複雑化してしまうと家族仲が修復不可能なほどこじれてしまうことになるので、身内同士の争いはできれば避けたいところです。
トラブルを避けるためにも、「どんなことをきっかけにトラブルが起きるか」を事前に理解して、それに対する適切な対処方法を知っておきましょう。

 

 

相続問題でよくあるトラブル一覧

兄弟間で遺産分割について揉める
遺産の範囲、遺産分割の割合、どのように遺産を分割するかでトラブルになる事があります。
ずっと親の面倒を見てきた兄弟が、他の兄弟より多く遺産をもらいたいと主張して話し合いがまとまらない場合もあります。

 相続人が多いことでトラブルになった
相続人ごとにそれぞれの主張がありますし、相続人全員で遺産分割協議をしなければならないので、必ず揉めるわけではないですが相続人の人数が多いほど相続トラブルのリスクは大きくなると言えるでしょう。

遺産に不動産が含まれている
不動産は現金と違い分割することができないうえ、評価が難しいため遺産の不動産を巡ってトラブルに発展する可能性があります。

遺言書の内容に偏りがある
遺言書がある場合は、基本的に遺言書の内容に沿って相続を行います。しかし「○○に全ての財産を譲る」というように極端に偏った内容だった場合、他の相続人は納得できません。

連絡の取れない相続人がいる
家を出て行ってから長らく連絡が絶えている兄弟姉妹がいる場合、相続手続きの手間がかかります

 

トラブルごとの対処方法

兄弟姉妹間で遺産分割について揉めている場合
法律上は平等に定められている兄弟姉妹の相続分ですが、兄弟姉妹それぞれに自分の主張があり、話し合いがまとまらないこともあります。
例えば「自分は親の面倒を見てきたのだから他の兄弟姉妹より多く遺産をもらいたい」「兄は家や車を購入する際資金援助してもらったのだから相続分は少なくするべきだ」等々。
こういった場合だけでなく全ての相続に共通しますが、基本的には法定相続分(注)に則って相続されることになります。
(注)法律で決められた相続人が相続する相続分のことを法定相続分と言います。
最優先:被相続人の配偶者
第一順位:子または孫などの直系尊属が相続
第二順位:親または祖父母などの直系尊属
第三順位:兄弟姉妹、代襲相続人
被相続人の配偶者は必ず法定相続人になり、加えて順位の高い人から法定相続人になります。

事前のトラブル回避策
話し合いがうまくいかず関係が悪化してしまった、という事態を避けるにはどうしたらよいでしょうか。
まず挙げられる方法は、遺言書を作成することです。
遺言書があれば原則として遺言書の内容に沿って遺産を相続することができます。一人の相続人を優先するあまり他の相続人にとって不平等な内容になっていたらまた問題が発生するので、遺言書の内容には注意が必要です。

すでにトラブルが起きている場合の対処法

1.遺産を多く相続する人が他の相続人に代償金を渡す
ある相続人が他の相続人よりも多く遺産を受け取った場合、その代償として他の相続人に現金を渡します。
例えばある相続人が被相続人の自宅を相続することになった場合、遺産分割協議書に「相続人Aは、被相続人の自宅の土地建物すべてを相続する代わりに、相続人Bに○○万円の現金を支払うこととする」というように、代償金を支払う旨を記載する必要があります。
※このとき、本来の相続分以上に代償金を受け取ると贈与税の課税対象になるので気をつけて下さい。

2.相続分を他の相続人に譲渡する
自分の相続分を他の相続人に譲渡することで相続争いから降りる、という選択肢もあります。相続分を有償で譲渡することもできます。

3.弁護士に相談する
身内の相続争いが解決しそうにない場合、相続問題を専門とする弁護士に相談すると事態が改善する可能性があります。第三者の意見を挟むことでお互い冷静に話し合いができるでしょう。

 

相続人が多い場合

相続人全員で遺産分割協議を行い遺産の分け方を決めなければならないため、相続人の人数が多いと苦労することになります。
相続人が多い場合というのは、被相続人に前妻との子がいる場合や養子縁組によって相続人が増えている場合などです。
この場合も、事前に遺言書で相続の内容を整理することでその後のトラブルを避けることができます。もしトラブルが発生している場合は人間関係が複雑で話し合いが難航していることでしょうから、弁護士などの相続の専門家を加えて話し合いをすると解決に向かうことが期待できます。

 

遺産に不動産が含まれている

遺産に不動産が含まれていることによって生じるトラブルとして考えられるのは以下の事案です。

1.不動産を相続する人としない人で不平等になる
例えば、3,000万円の価値がある不動産と現金200万円を相続するとしたら遺産の総額は3,200万円です。しかし長男だけが不動産を相続するとなると平等な相続とは言えません。
この場合の対処法は、不動産を相続した人が他の相続人に現金を支払う「代償分割」という方法です。
そのため他の相続人に代償金として渡す資産がないと代償分割を実行できません。
将来相続が発生した際に代償分割のための資金がない、という場合は早いうちに他の相続人に相談して理解を得る必要があります。
また、財産を遺す側の対策としては自身に生命保険をかけて代償分割用の現金を遺す、という方法も考えられます。

2.不動産の評価額で意見がまとまらない
相続する不動産をいくらの価値があるとするかで相続人同士意見が対立し、話がまとまらなくなることがあります。これは、不動産の評価方法が複数あり相続人の間で評価方法を自由に決めることができるからです。
不動産の評価額が低い方が他の遺産を多く取得できたり代償金が少なくて済むといった事情があるので、不動産を相続する人にとっては評価額が低い方がいい、そうでない人には高い方がいい、というそれぞれの都合もあり、不動産の評価額を巡ってトラブルになる事もあります。
不動産評価を巡り遺産分割調停・審判するとなるとコストも時間もかかるため、遺産分割協議で相続人同士の合意を得るのがベターです。
早い段階で弁護士などの専門家を交えながら相続人全員が納得できる方法を探しましょう。

3.不動産の名義を巡るトラブル
不動産を共同名義にすることでトラブルに発展してしまうこともあります。
共同名義にすると売却などの際に名義人全員の同意が必要になり、各々の一存で処分することができなくなりますし、名義人の一人が亡くなった場合はまた相続が発生します。そのため共同名義にするのは避けた方が無難です。
他にも、相続した不動産の名義がすでに亡くなった祖父のままだったというケースもあります。その場合は祖父の相続から整理していくことになり、膨大な時間がかかります。
こういったケースは個人の手には負えないことが多いため、司法書士など専門家の力を借りることをお勧めします。
また、そうなる前に親が健在なうちに不動産登記の確認をしておくと安心です。有料ですが自宅からインターネットによって確認することができます。もし不動産の名義が亡くなった祖父でも、相続の当事者である親の主導で解決に臨むことができます。

 

遺言書の内容に偏りがある

遺言書の内容が「○○に全財産を譲る」というように一人にだけ偏った内容である場合、他の相続人は「遺留分」を請求する「遺留分侵害額請求」をすることができます。
「遺留分」とは、法定相続人が最低限相続できる権利のことを言います。遺言書がある場合は法定相続より遺言書の効力が優先されてしまうため、遺言書の内容が偏っていて他の相続人が不利益を被る場合にも最低限相続できる取得権のことです。
この遺留分権を持っているのは被相続人の配偶者・第一順位である被相続人の子供・第二順位である被相続人の両親までです。
遺留分侵害額請求の期限は「遺留分の侵害があることを知った日から1年」です。しかし「知った時」がいつなのかを巡って争いになることもあるので、可能な限り被相続人が亡くなってから1年以内に請求するのが望ましいです。

 

連絡の取れない相続人がいる

遺産分割協議は相続人全員で行います。
もし音信不通の相続人がいて遺産分割協議が開始されたことを知らせる手段がない場合は、所在を知るために被相続人の戸籍の附票を出生まで遡って取得しましょう。
被相続人と血縁関係であればその戸籍の附票に記載されています。戸籍の附票内に住民票上の住所が記録されているので、その住所に手紙を送ることで連絡を取ることができます。

住民票の住所に住んでいない場合は以下の方法を取りましょう。
1.遺産分割調停を申し立てる
遺産分割調停を申し立てることで裁判所から相続人に対して呼出状が送付されます。呼出状が無視された場合は自動的に遺産分割審判に移行し、遺産分割審判にも出廷しない場合、その相続人は相続権を失うことになります。
2.不在者財産管理人の選任を申し立てる
住所不明・音信不通といった行方不明者の財産を代理で管理する人を選任する手続きです。不在者財産管理人は、裁判所が相続に利害関係を持たない親族、もしくは司法書士や弁護士といった専門家から選任します。

エピローグ

相続トラブルが起こると、もともと仲が良くても当事者同士の仲がこじれて、遺産分割の終了後も絶縁状態になってしまうことがよくあります。
そのような事態は被相続人(となる人)も望んでいないことでしょう。
だからこそ、当事者同士間の綿密なコミュニケーションを保つことや、できるなら第三者の専門家にも仲裁に入ってもらい相談することに意義があります。

 

名古屋相続センター
〒462-0843
愛知県名古屋市北区田幡2-12-14 明治安田生命黒川ビル5階

電 車黒川駅1出口から徒歩約1分

お 車駐車場「One Park黒川駅前」をご利用ください

メールでお問合せメールでお問合せ
電話
LINE@LINE@