相続放棄と自己破産

2021年11月10日

プロローグ

相続放棄と一言で言ってしまうと簡単なイメージで考える方も多いと思います。
ですが、やはり相続に関係することなので法律上の手続きが必要です。
相続人に自己破産の悩みがある場合のケースもこちらでご説明します。

 

相続放棄とは

・被相続人の権利や義務を一切受け継がないこと。
・相続人本人が相続放棄の手続きをしなければなりません。
・相続放棄の申し立ては、被相続人が亡くなったことを知ってから3カ月以内と期限は短く、この期間を過ぎると相続放棄をすることが出来ません。
・被相続人の最後の所在地を管轄する家庭裁判所で行います。

 

相続放棄の流れ

相続放棄の流れについてご説明します。
相続放棄は相続が発生してから3カ月までに行わなければなりませんが、流れさえつかめば焦ることはありません。

相続放棄の手続きをする前に被相続人の財産をしっかり調査しておきましょう
相続が発生した場合、財産調査を行いましょう。同時に、故人の遺言書も確認が必要になります。
財産調査が3カ月以内に把握することが難しい場合は、家庭裁判所に【相続放棄のための申述期間伸長の申請】を行うことができます。
しかし、家庭裁判所の裁量により延長が認められない場合もあるので注意が必要です。
家庭裁判所の裁量によって1年以上の延長が認められることもありますが、一般的に1ヵ月~3ヵ月程度です。

相続放棄申述書の作成と必要書類の収集
まず、相続放棄申述書の作成です。
裁判所ホームページからダウンロードすることができますが、家庭裁判所にて直接入手することもできます。
相続放棄をする人が20歳以上の場合と20歳未満の場合で裁判所ホームページが分かれていて、記入例の記載もあるのでそちらを参考に作成をしましょう。
次に必要書類ですが、相続放棄をする人によって書類の数が変わります。
配偶者、子や孫、父母・祖父母、兄弟姉妹やその代襲者※(甥・姪)の順番によって提出する書類の数が多く複雑です。
※代襲者とは、代襲相続人の事を指します。本来相続人である人がすでに亡くなっている場合などに代わりにその子が相続人になる事です。
説明上ここでの表記のみ被相続人を故人、と明記させていただきます。

相続放棄をする場合、配偶者や子とその孫にあたる方は必要になる書類が少ないのがわかります。相続の順位の関係性により近ければ少なく遠ければ多くなります。

家庭裁判所に提出
相続放棄申述書と必要書類を、被相続人の死亡時の住所を管轄している家庭裁判所に相続放棄の申立を行います。
また、申立時には裁判所に一定の金額の小為替と収入印紙を納める必要があります。
金額は裁判所によって異なるので、事前に裁判所へ確認しましょう。

裁判所から照会書・回答書(事案次第)/相続放棄申述受理通知書の到着
相続放棄の申立てからしばらくすると、裁判所から照会書や回答書が送られてくる場合があります。
※照会書や回答書は事案次第では送付がない場合もあります。
相続放棄は、一度認められると原則的に撤回できず、本当に本人の意思で相続放棄を行っているかなどを調べるために、このような書面が送られてきます。
回答書に記入し署名と押印をして、裁判所に提出してください。
相続放棄が認められた場合は、相続放棄申述受理通知書という書類が裁判所から送付されます。
ここまでが相続放棄の手続きになります。

 

単純承認と限定承認

相続放棄をすると決めている人もどうすべきか迷っている人も知っていて欲しい制度があります。
単純承認と限定承認といわれる制度があることです。
相続が発生した時点で相続人は、単純承認・相続放棄・限定承認のどれかを選択しなければなりません。

単純承認とは
被相続人(亡くなった方)のプラスの財産もマイナスの財産も全て相続する制度です。
相続人であると知ったときから3ヶ月以内に相続放棄や限定承認の手続きを取らなければ、自動的に単純承認となります。

限定承認とは
プラスの財産の限度でマイナスの財産を引き継ぐ事で、残された財産以上に責任を負うことはないということです。
事業を継承したいが借金がある、不動産だけを相続したい、プラスの財産はあるが、後に借金が判明する可能性がある等、の理由による場合に限定承認を利用することが出来ます。

相続放棄と限定承認の比較表

限定承認は、手続き上どうしても複雑で時間もかかるのでまずは専門家に相談することをお勧めします。

 

自己破産と相続放棄

自己破産と相続放棄は、「借金の支払い義務がなくなる」という点では同じです。
ですが、別の制度なので上記の相続放棄の記事をご理解頂けてから読み進めて頂けたらと思います。
自己破産は、自己都合で支払うことのできない自分の借金を特別に免除してもらうことですが、税金の支払義務は生じます。

自己破産の問題と相続の時期が被るケース

自己破産を行った方でも相続で財産の相続を受けることが出来ます。
これは、裁判所の破産開始決定の前後で大きく変化します。

裁判所の破産開始決定前
遺産相続であっても、破産手続きの中に組み込まれます。
相続した遺産は管財人の管理下に置かれ、遺産分割協議に参加できません。破産手続が決定と同時に破産管財人が裁判所の許可を受けて協議に参加し分割協議書に押印します。

裁判所の破産開始決定後
遺産相続は破産手続きで処理されることはなく、遺産分割協議に参加する事ができます。
取得した財産を自由に使うことができ、生活再建を行うには一番良いケースでしょう。

 

エピローグ

相続は殆どの人が関わる事ですが、いざその立場になったら相続放棄・限定承認どちらか決めなければならず、3カ月以内に全てを終えないといけない制度です。
その時が来る前に、相続放棄の内容や手順をこの記事を参考に一度考えていただけたらと思います。

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