負担付贈与と負担付遺贈とは?

2023年4月19日

プロローグ

生前に不動産などの財産を譲ろうと考えた時、ほとんどの人は「生前贈与」という方法を考えるのではないでしょうか。

生前贈与とは、財産を生きているうちに配偶者や子などに贈与することで、ご自身の財産を譲りたい人に譲ることができ、後々に起こり得る相続トラブルの回避方法としても効果的です。

さらに、生前贈与を行うと相続税の課税対象となる財産を減らすことができるため、相続税が軽減され相続税の節税対策としても有効です。

しかし、贈与しようと思った不動産(財産)にローン(負担)が残っていた場合、贈与することはできるのでしょうか。

 

今回は、ローンが残っている不動産の贈与「負担付贈与」について解説します。

また、似たような用語の「負担付遺贈」についても解説していきます。

 

負担付贈与とは

負担付贈与とは、贈与者(財産を遺す人)が財産を贈与する代わりに、受贈者(財産を受け継ぐ人)に一定の債務を引き受けてもらうことを条件とした財産の贈与をいい贈与税の課税対象となります。

分かりやすく説明すると、負担付贈与は「○○の贈与を受ける代わりに△△を負担する」というもので、

・マンションを贈与する代わりにローンの残金を支払ってもらう。

・配偶者の面倒を見てもらう代わりに毎月(毎年)現金を贈与する。

・土地を贈与する代わりに一部分を無償で使わせてもらう。

など、贈与者が無償で財産を譲るのではなく、受贈者に負担をしてもらう代わりに財産を譲るというものです。

負担付贈与はお互いの同意で成立しますが、万が一のトラブルに備え契約書を作成する方が良いでしょう。

また、負担付贈与は贈与者のみで決めるのではなく、受贈者の承諾が必要になります。

 

負担付贈与の注意点

負担付贈与の場合、受贈者、贈与者の両者に税金が発生してしまう場合があります。

これは、受け継いだ財産より負債の方が多くなってしまった場合です。

仮に、贈与者が住宅ローンを利用して3,000万円の住宅を購入し、その住宅を受贈者へ負担付贈与しようとした際、ローンの利息の関係で債務合計額が4,000万円となった場合、贈与者が3,000万円の住宅を4,000万円で譲ったことになり、差額の1,000万円は贈与者の譲渡所得が発生したということになります。

この場合、贈与者には譲渡所得税や住民税が発生することになり、贈与者、受贈者ともに税金が発生することになりますので注意が必要です。

 

贈与税の計算式と負担付贈与の計算式

贈与税の計算方式は

「(贈与を受けた額-基礎控除110万円)×贈与税率-税率ごとの控除額」です。

贈与の場合、受贈者は無償で財産を受け継ぎます。

負担付贈与の贈与税の計算方式は

「(贈与を受けた額-負担した額-基礎控除110万円)×贈与税率-税率ごとの控除額」です。

負担付贈与の場合、受贈者は贈与を受け継ぐ代わりに負担を負うことになります。

 

 

負担付遺贈とは

負担付遺贈とは、遺言書で受遺者に財産を相続する代わりに一定の債務(義務)を負担させる遺贈のことをいい相続税の課税対象となります。

負担付遺贈の場合、受遺者の承諾は不要で、受遺者も遺贈を放棄することが可能です。

分かりやすく説明すると、

・受遺者に財産を渡す代わりにペットの世話をしてもらう。

・受遺者に財産を遺贈する代わりに遺贈者を無償で居住させる。

・受遺者に財産を遺贈する代わりに遺贈者の生活支援をしてもらう。

など、受遺者が債務を負担することを条件に財産を受け継ぐというものです。

 

負担付遺贈の注意点

負担付遺贈は、財産を相続することを条件に債務を負担させる遺贈ですが、受遺者がその負担を履行せず財産だけを受け取る可能性もあります。

この場合、遺贈者は受遺者に負担を履行するよう催告をすることができますが、催告しても一定の期間内に履行しない場合は、家庭裁判所に当該遺言の取消しを請求することができます。

受遺者が確実に負担を履行するのを見届けてもらうため、遺贈者は「遺言執行者」を指定しておくことも大切です。

また、受遺者にも債務の負担には限度があります。

受遺者が受け継ぐ財産と負担の割合が同等でなければ、受遺者は受け継ぐ財産以上の負担を履行する必要はなく、放棄することも可能です。

 

また、負担付遺贈と似た性質を持つものに「負担付死因贈与」があります。

負担付死因贈与は基本的には負担付贈与と変わりませんが、贈与者が亡くなってから効力が発生するという点が異なります。

また、負担付遺贈が遺言なのに対して、負担付死因贈与は贈与契約ですが、負担付死因贈与と負担付遺贈は相続税の課税対象になります。

 

 

エピローグ

 

負担付贈与も負担付遺贈もメリットはありますが注意点もあります。

贈与を考えている人には、贈与と負担付贈与の違いは重要なものになります。

事前に税金がどれくらい発生するのか、どの方法がご自身に適切なのかを把握することが大切です。

また、負担付遺贈をお考えの場合は受贈者の承諾が不要な分、譲与する財産と負担のバランスを配慮しておく必要があります。

また、負担付死因贈与というのもあります。

どの方法を選択するのかは、それぞれのメリットや注意点を良く理解して決めなければなりません。

 

ご自身で分からない場合や不安がある場合等、少しでも心に引っかかっている場合は法の専門家(司法書士・弁護士等)に依頼することをお勧めします。

 

 

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