相続税の計算方法

2022年6月8日

プロローグ

相続税とは、亡くなった方(被相続人)の遺産(相続財産)を相続または遺贈された場合に、その遺産総額が基準より大きいとかかる税金です。

遺産が基準の金額を超える場合には、その金額に応じた相続税率が適用されます。

もし基準の金額を超えないようであれば、相続税の申告自体が必要なく納税も必要ありません。

 

なお国税庁の発表によれば、令和2年に亡くなった方のうち、その遺産が相続税の課税対象となった方の割合は8.8%(前年分は8.3%)でした。

もし自分が遺産を相続したときには相続税を納める必要があるのか?納めるとすればその金額はいくらになるのか?その計算方法をご説明します。

 

相続税の計算方法

 

相続税を計算するためには次の手順で行います。

手順1)法定相続人の数と法定相続分を確認する

手順2)相続財産総額を計算する

手順3)課税遺産総額を計算する

手順4)相続税の総額を計算する

手順5)各相続人が負担する相続税額を計算する

それでは各手順についてご説明します。

 

手順1)法定相続人の数と法定相続分を確認する

 

民法の定める相続人が法定相続人となり、相続人の範囲、順位、相続割合が定められています。

法定相続人になれるのは配偶者と血族です。

法律婚の配偶者は常に法定相続人ですが、離婚した元配偶者や内縁関係にある相手は法定相続人になりません。

 

配偶者以外の法定相続人については順位があります。

第1順位が子など直系卑属、第2順位が親など直系尊属、第3順位が兄弟姉妹及び甥・姪となっています。

同じ順位の人が複数いる場合は全員が法定相続人となります。

また、先順位の人が1人でもいる場合は後順位の人は法定相続人になりません。

 

被相続人が遺言を残している場合は、遺言で指定された相続人が指定された財産を相続しますが(遺留分の侵害がある場合を除く)、相続税の計算は法定相続人が法定相続分を相続するものとして行います。

 

法定相続人が相続できる割合(法定相続分)は、次のとおりです。

法定相続人 相続割合
 配偶者と子など直系卑属 配偶者1/2、子1/2(人数で分ける)、子や孫などいない場合はすべて配偶者、配偶者がいない場合はすべてを人数で分ける
 配偶者と親など直系尊属 配偶者2/3、親1/3(人数で分ける)、親、祖父母などいない場合はすべて配偶者、配偶者がいない場合はすべてを人数で分ける
 配偶者と兄弟姉妹・甥・姪 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(人数で分ける)、兄弟姉妹などがいない場合はすべて配偶者、配偶者がいない場合はすべてを人数で分ける

 

 

手順2)相続財産総額を計算する

 

相続財産の総額の計算するときに含めるもの、含めないもの、差し引くことができるものは下の表のようになります。

相続財産総額に含める財産
 種類 詳細
 金融財産 現金・預貯金・公社債など
 不動産(土地) 土地(※2)・借地権・地上権・賃借権など
 不動産(建物) 家屋・倉庫・駐車場・借家権・マンションなど
 動産 家具・貴金属・宝石・書画骨董品・自動車など
 各種権利 著作権・特許権・商標権・ごるふ会員権など
 事業用財産 機械・備品・商品・原材料・農産物・売掛金など
 みなし相続財産 生命保険・死亡退職金(※3)

 

相続財産総額に含めない財産
種類 詳細
 祭祀継承されるもの 墓地や墓石、仏壇、日常礼拝しているもの
 公共事業用財産 宗教、慈善、学術など公共事業のために使う相続財産

 

相続財産総額から差し引くマイナスの財産
種類 詳細
 債務 借入金、未払金
 税金 固定資産税、住民税など
 葬式費用 通夜、告別式の費用、死亡診断書、火葬、埋葬料など

 

宅地の種類 適用要件 上限面積 減額率
居住用宅地 配偶者もしくは同居親族が相続する 330㎡ 80%
事業用宅地 相続人が事業を継承する 400㎡ 80%
貸付事業用宅地 相続人が事業を継承する 200㎡ 50%

※2相続税を納めるために土地を売却し、自宅や事業を手放さざるを得なくなることを防ぐため「小規模宅地等の特例」があります。

 被相続人が住んでいた土地や事業用として使っていた土地を相続する場合は一定の要件を満たすことで相続税の課税評価額が50%~80%減額されます。

※3生命保険金や死亡退職金で遺族の生活保障という意味もありますので非課税額(500万円×法定相続人数)が定められています。

 

計算例) 法定相続人が妻と長男・長女の場合

 預金・貯金・株式  5,000万円
自宅土地 200㎡

(評価額6,000万円)

 1,200万円 ※6,000×(1.08)=1,200万円
自宅建物 1,000万円
生命保険 1億円  8,500万円 ※1億円-(500万円×3)=8,500万円
借入金  △600万円
葬式費用  △300万円
 相続財産総額  1億4,800万円

 

 

手順3)課税遺産総額を計算する

 

手順2で計算した相続財産総額から相続税の基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を計算します。

遺産に関わる基礎控除
基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数(相続を放棄した人も含む)

 

計算例)法定相続人が妻と長男・長女で相続財産総額1億4,800万円の場合

基礎控除額 ………… 3,000万円+600万円×3人=4,800万円

課税遺産総額… 相続財産総額1億4,800万円-基礎控除額4,800万円=1億円

 

 

手順4)相続税の総額を計算する

 

手順3で計算した課税遺産総額を法定相続分で分けたとして各法定相続人の相続税額を計算、それを足し相続税の総額を計算します。

相続税額は下記の表に当てはめて計算します。

課税遺産の法定相続分 税率 控除額
 1,000万円以下 10%  -
 1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円
 3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円
 5,000万円超 1億円以下 30% 700万円
 1億円超   2億円以下 40% 1,700万円
 2億円超   3億円以下 45% 2,700万円
 3億円超   6億円以下 50% 4,200万円
 6億円超 55% 7,200万円

 

計算例)法定相続人が妻と長男・長女で課税遺産総額1億円の場合

1億円×1/2=5,000万円 税率20% 控除額 200万円 相続税額 800万円
長男 1億円×1/4=2,500万円 税率15% 控除額 50万円 相続税額 325万円
長女 1億円×1/4=2,500万円 税率15% 控除額 50万円 相続税額 325万円

相続税の総額 1,450万円

 

 

手順5)各相続人が負担する相続税額を計算する

 

手順4で計算した相続税の総額を実際の各人の相続額に応じて分けます。

 

計算例)相続税の総額が1,450万円、実際の相続割合は妻が20%、長男が50%、長女が30%の場合

妻  実際の相続割合20% 1,450万円×20%=相続負担額290万円 納付税額   0円

※配偶者が実際に相続した遺産の額が1億6,000万円まで、もしくは法定相続分までであれば相続税は非課税です。

長男 実際の相続割合50% 1,450万円×50%=相続負担額725万円 納付税額 725万円

長女 実際の相続割合30% 1,450万円×30%=相続負担額435万円 納付税額 435万円

 

エピローグ

 

相続税の申告の期限は被相続人が亡くなってから10ヵ月以内です。申告が遅れれば小規模宅地等の特例などが適用されなくなり、納税額が大幅に増えることもあります。

また相続税の納付も同じく被相続人が亡くなってから10ヵ月以内に現金で行わなければなりません。

納付が遅れれば、遅延税など追徴課税がかかります。

法定相続人の確認には戸籍を調べる必要もありますし、遺産の評価にも時間がかかります。

また事前に節税対策を行っておけば相続税を大きく減らすことも可能です。

いざというときのためにあらかじめ準備しておくことが必要でしょう。

 

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