相続の範囲 ― 人

2023年7月19日

プロローグ

 

一生のうちに何度も経験することがない相続手続き。

相続に関わる際、被相続人の遺産を受け継ぐのはどの辺りの人までなのか分からないという方は多いのではないでしょうか。

そこで今回は相続の範囲(人)について色々なパターンを含めて見ていきたいと思います。

 

 

法定相続人に関する基礎知識

 

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことをいいます。

相続に関する法律についてコチラで解説していますのでご参考下さい。↓

リンク先:(相続に関する法律)

 

必ず法定相続人になる配偶者:配偶者

被相続人の法律上の配偶者は必ず法定相続人になります。(民法890条)

民法では法律婚主義を採用しているため、相続における「配偶者」は法律上の配偶者のみとなります。

仮に被相続人が亡くなられた際に別居や離婚について争いが生じていたとしても、婚姻関係が継続していれば、その配偶者は法定相続人になります。

事実上の配偶者(内縁関係や事実婚など)に関しては法定相続人としての権利はありません。

 

法定相続人の第一順位:直系卑属(子や孫)

被相続人の子は法定相続人の第一順位(民法887条1項)となります。

胎児(886条)や認知した非嫡出子(婚姻関係がない両親との間に生まれた子)、養子縁組をした養子なども相続権を有するとされています。

子どもが複数いる場合、第一順位の権利を等分して分け合うことになります。

血縁の有無や年齢などによる差別はなく、全員が等しい割合で相続権を獲得します。

 

例えば、相続発生時にまだ生まれていない胎児と、すでに産まれている子と、被相続人の生前に養子縁組した養子の3人がいる場合、第一順位の法定相続人が3人=それぞれ3分の1ずつ相続権を獲得することになります。

また、被相続人の子が既に亡くなっていて相続権を失っている場合でも、亡くなった子に子(被相続人の孫)がいた場合には、その子(被相続人の孫)が法定相続人となり相続の権利を受け継ぎます。

このことを「代襲相続」といいます。

※子の場合は孫の代でも代襲できるのに対し、兄弟姉妹は子の代(甥姪)までの代襲という制限があります。

 

法定相続人第二順位:直系尊属(父母・祖父母)

被相続人の父母や祖父母などの直系尊属は、第二順位の法定相続人となります。

第一順位の相続人がいない場合、被相続人の父母などが相続人となります。

また、父母も祖父母も健在であるような場合には、被相続人により親等の近い父母の代だけが相続人となります。(民法889条1項1号)。

ここでいう直系尊属には実親のほか養親も含まれます。

また、直系尊属に関しては代襲相続の権利はありません。

 

法定相続人第三順位:兄弟姉妹

被相続人に直系尊属、直系卑属がいない場合、第三順位の兄弟姉妹が法定相続人となります。(民法889条1項2号)

このとき、被相続人の配偶者の兄弟など義理の兄弟姉妹には原則として相続権がありません。

また、兄弟姉妹は直近一代に限って代襲相続が認められています。

被相続人の甥姪までは相続人になる可能性がありますが、半血の兄弟姉妹(異母・異父の兄弟姉妹)に関しては相続分が少ない設定になっています。

 

法定相続人に関するよくある疑問

 

誰が法定相続人に該当するかは相続によって異なります。

これにより様々な疑問が浮かぶかと思います。

ここからは、法定相続人に関してのよくある質問とその回答をご紹介します。

 

養子は法定相続人になれるのか?

被相続人が生きている間に養子縁組をした場合、その養子は被相続人の子として法定相続人第一順位に数えられます。

相続では、実子と養子で相続分に差はありません。また養子の人数にも制限はありません。

(※相続税法上では控除の人数計算の際に制限があります)

普通養子縁組

普通養子縁組の場合、実親との親子関係はそのままで、養親との親子関係が成立する養子縁組です。

この場合、養子は実親と養親の2組の相続権が発生します。

特別養子縁組

特別養子縁組の養子の場合、法律上養親の実子として扱われますので、養親の相続権はありますが実親の相続権はありません。

※被相続人の生前に養子縁組をしていない連れ子に関しては、法定相続人になれませんのでご注意ください。

 

前妻や前夫は法定相続人になれるのか?

前妻や前夫など既に離婚が成立した元配偶者は、原則として法定相続人になりません。

しかし、別居や離婚調停中など婚姻関係が明らかに破綻していた場合でも、法律上婚姻関係が継続している場合には、その配偶者は法定相続人となります。

このとき、残された配偶者に既に恋人がいる状態でも、新たなパートナーと事実婚状態であったなどの事情があっても相続権には影響を及ぼしませんし、亡くなられた配偶者に他のパートナーなどがいても、このパートナーは保護されません。

 

前妻や前夫の子は相続人になれるのか?

被相続人の前妻や前夫の子が実子であれば、現在の親権の所在にかかわらず、その子には相続権が付与されます。

連れ子の場合、被相続人の生前に養子縁組をしていた場合には法定相続人となりますが、そうでない場合にはその子に相続権はありません。

 

法定相続人の1人が亡くなっている場合はどうなるのか?

被相続人よりも前に法定相続人の1人が亡くなっている場合は、代襲相続が発生する可能性があります。

被相続人と法定相続人が同時に亡くなった場合にも発生します。

代襲相続は配偶者や直系尊属からは発生せず、兄弟姉妹の代襲相続は子の代までに限られるため複雑ではありません。

しかし、子の代襲相続の場合は代襲者である子の子(被相続人の孫)が亡くなっており、さらにその子(被相続人のひ孫)がいる場合には、代襲が続くことになるため、相続人の調査が非常に重要なポイントになります。

ただし、亡くなった法定相続人に代襲者がいない場合、同順位の法定相続人がいなければ、次順位の法定相続人に相続権が移行します。

なお、被相続人が亡くなった後に法定相続人の1人が亡くなられた場合は、亡くなった法定相続人の法定相続人がその権利を受け継ぎ、被相続人の相続に関わってきます。

このことを「数次相続」といいます。

 

法定相続人の1人が行方不明の場合はどうなるのか?

法定相続人の1人が行方不明になっている場合、その相続人が生存している限り相続の権利はありますので、その人を除外して遺産分割協議を行うことはできません。

こういった場合、行方不明の相続人の戸籍を調べ手紙などで連絡を取ります。

連絡がつかない、所在が分からないといった場合には「失踪宣言」を行うことで、行方不明になっている相続人を除外して遺産分割協議を行うことができます。

※失踪宣言とは、一定の条件のもと、家庭裁判所が行方不明になっている相続人を法律上亡くなったとみなすことをいいます。

 

法定相続人の代襲相続について

法定相続人のうち、子と兄弟姉妹に関しては「代襲相続」が認められています。

子の場合は孫の代でも代襲できるのに対し、兄弟姉妹は子の代(甥姪)までの代襲という制限があります。

代襲相続が発生すると、代襲される人を「被代襲者」、代襲する人を「代襲者/代襲相続人」と呼びます。

代襲相続人は被代襲者の権利をそのまま承継します。

1人の被代襲者に対して代襲相続人が複数人いる場合、例えば、被代襲者である子に子供が3人いる場合には、代襲者である子の子はそれぞれ1/3ずつの権利を承継するという形になります。

 

エピローグ

 

今回は、相続人の範囲について紹介しました。

相続手続きの際、誰が相続人になるのかということ、相続人の範囲がお分かりいただけたのではないでしょうか。

ご自身の状況を図や表に当てはめて見るとより分かりやすくなると思います。

相続に関するお悩みには「何からすればよいのか分からない」、「自分自身の悩みが整理できない」といったお声をよく伺います。

こういった場合、相続の専門家に相談することで解決が見えてくるのではないでしょうか。

 

 

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