民事信託

2022年7月6日

プロローグ

あまり聞き馴染みのない「民事信託」という言葉。

どういったものかご存知の方はあまり多くないのではないでしょうか。

ご自身が元気なうちは、財産の管理などを人に任せるという考えには及ばないかもしれません。

しかし高齢化社会が問題になっている昨今、老齢で判断力が低下したり認知など患ってしまった場合は財産の管理などを行うことが困難になります。

そうなる前に、老後への備えや相続対策としても注目されているのが民事信託です。

今回の記事では、民事信託とはどのようなものか、民事信託の方法、メリットや注意点を解説していきます。

 

民事信託とはどういうものか

 

「信託」とは信じて任せるという意味があります。

信託と聞くと銀行など金融機関の商品を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、それとは異なり金融機関の受託者が金融機関であることに対し、民事信託の受託者は信頼できる人となります。

 

民事信託とは、ご自身の財産をご自身以外の人に預け運用・管理・処分を任せ、財産を受け取る人の生活を守るという方法です。

ご自身が財産を託し(委託者)、その財産を運用・管理する人(受託者)、運用で得た利益を受け取る人(受益者)の三者で取り扱う営利目的ではない信託です。

ここで大切なのは、営利目的では無い信託という部分です。

※未成年や成年被後見人などは受託者にはなれません。

 

民事信託を考える

 

では、どういう場合に民事信託を考えるのでしょう。

高齢で判断力が低下してしまった、認知を患ってしまったなど、ご自身が判断能力を失ってしまうと財産の管理や相続問題が難しくなります。

また、成年後見制度では生前の財産管理に対して対応できない部分があるという問題や、手間がかかるといった問題があります。

そういったことが起こる前に、相続対策の方法として柔軟に対応できる民事信託の利用を考えるのが良いでのではないでしょうか。

 

 

民事信託3つの方法(信託契約・遺言・自己信託)

 

信託契約

委託者(ご自身)と受託者(財産を運用・管理する人)が話し合って信託の設定をする。

この契約は、特別な形式が定められていませんので口頭でもご自身で作成した契約書でも成立します。

しかし、後々のことを考え公正証書で作成することが最善でしょう。

また、ご自身が元気で判断能力があるうちに締結することが大切です。

 

遺言信託

委託者(ご自身)が遺言で財産の信託を設定する。

この方法は、遺言に記すものなので委託者(ご自身)が単独で行えます。

遺言を残す際は公正証書遺言で作成することが最善でしょう。

遺言信託もご自身が元気で判断能力があるうちに作成することが大切です。

また遺言信託の場合、委託者(ご自身)が亡くなった後から実効されます。

 

自己信託

委託者(ご自身)が、財産を自分自身が受託者となり受益者(運用利益を受ける人)のために運用・管理するという意志を公正証書などで信託宣言し設定する。

信託財産に設定した財産は、信託登記する必要があります。

上記で説明した2つの方法と少し異なりますが、子が小さい・子が障害者で自分で財産管理できないという場合や事業継承の対策などの場合に自己信託を選択することがあります。

※信託登記とは信託内容を登録しておくための登記で、個人の財産とは別に管理する必要があります。

 

民事信託のメリットと注意点

・メリット

委託者(ご自身)の意思の尊重

信託契約で内容を決めておくことができますので、生前に財産の利用方法や受益者などを設定し、ご自身が亡くなられ後もその意志が尊重されます。

 

遺言や成年後見制度よりも柔軟な財産管理

遺言では不可能な財産継承先を数世代まで指定でき、成年後見制度よりも柔軟に財産を管理することができます。

 

不動産相続に関してのリスクを避ける

相続財産に不動産があり法定相続分が数人になった場合、様々な争いが起きてその不動産を有効活用できなくなる問題があります。

そういった場合に民事信託で受託者を設定しておくと、争いのリスクを避けることができます。

 

・注意点

税務申告の手間

信託財産が年間3万円以上の利益になる場合には信託計算書と合計表を提出しなければならず、不動産所得がある場合には明細書が必要となり、一般の税務申告より複雑で時間もかかります。

 

民事信託では決められないこと

遺言書で相続財産を分割する旨を書いた場合、遺産分割協議が不要になります。

しかし、民事信託ではすべての財産に対応することが困難なため対応できなかった部分については別途、遺産分割協議を行わなければなりません。

 

専門家が受任者になれない

民事信託について専門家(弁護士・司法書士)に相談することはできますが、専門家が受託者(財産を運用・管理・処分する人)になることはできません。

 

エピローグ

今回は、民事信託についてお話しました。

民事信託がどういうものか、そのメリットやデメリットなどお分かりいただけたと思います。

また、民事信託の大切な部分は「受託者は営利を目的としない信頼できる人」となっており、未成年や被成年後見人を除いた信頼できる人であれば、どなたでも受託者に設定することができます。

その場合、受託者を家族や親族に設定することが大半なことから家族で行う民事信託のことを家族信託といわれています。

ですので、民事信託と家族信託に大きな違いはないということになります。

 

家族信託についての詳細はコチラをご参考下さい。↓

家族信託とは

 

相続対策について早過ぎるということはありません。

ご自身が健在なうちに民事信託・家族信託について考えていただければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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