遺産分割手続き中に相続財産を勝手に処分!?そんな時は「遺産分割審判前の保全処分」

2024年12月4日

プロローグ

遺産分割協議とは、被相続人が遺した財産についてどのように分けるのかを相続人の間で話し合い決めていく手続きです。

この話し合いで遺産分割がまとまらない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停遺産分割審判を申請して遺産分割方法を決めることになります。

しかし、遺産分割の手続きは時間を要し、調停や審判になった場合は遺産分割の決定までにさらに時間を要します。

この遺産分割決定までの期間に財産管理をしている相続人が、相続財産を隠したり処分して調停や審判が決定する頃には分割されるはずの財産が無くなっているということもあり得ます。

費用や時間を費やして調停や審判を行っても、相続財産が無くなっていたのでは意味がありません。

そのような事態を防ぐために遺産分割審判前保全処分という手続きがあります。

今回は、遺産分割手続き中に勝手に相続財産を処分されないための「遺産分割審判前保全処分」について解説します。

 

 

遺産分割審判前の保全処分

家事事件手続法第105条1項、遺産分割審判前の保全処分では「家庭裁判所に係属している場合、裁判所はこの法律に基づき、仮差押え、仮処分、財産管理者の選任など必要な保全処分を命じることができる。」となっています。

つまり、遺産分割に関する審判が行われる前に相続財産が処分されたり、隠されたりすることを防ぐために家庭裁判所が一時的に財産を保全するための措置を取るということです。

保全処分は相続財産の隠し立てや処分のリスクから財産を守り、不正やトラブルを防ぐ目的で行われます。

 

具体的な保全処分

 預金の凍結 相続財産に含まれる預金が勝手に引き出されないように銀行口座を凍結することがあります。
 遺産の管理処分の禁止 相続人の一部が勝手に不動産や預貯金の処分、使用を防ぐための処置で、相続財産の減少や他の相続人に不利益が生じることを防ぎます。
 財産の差し押さえ 相続財産が第三者に移転するリスクがある場合や、隠そうとする可能性がある場合に裁判所が差し押さえを行いその財産を確保する措置です。
 遺産の管理者の選任 特定の相続人が財産を適切に管理できない場合や争いが起きる恐れがある場合、裁判所が相続財産の管理者を選任して財産を管理させることもあります。
 担保の提供 遺産分割審判が終わるまで相続人が相続財産の一部を担保として提供するよう命じて、万が一相続財産が不適切に扱われた場合に備えます。

これらの措置は遺産分割が終わるまでの間、財産の減少や不適切な利用を防ぐための一時的なものです。

これにより、遺産分割の公正な審理と正式な遺産分割が行われます。

 

申立ての流れ

保全処分を希望する相続人は家庭裁判所に対して保全処分の申立てを行い、家庭裁判所は相続財産の保全が必要と判断した場合に保全処分を命じます。

《一般的な保全処分の流れ》

①   保全処分の必要性が発生 相続人の一部が勝手に相続財産を処分しようとしている、流失する恐れがある、遺産分割前に財産の保全が必要 など
②   家庭裁判所への申立て 保全処分を求める相続人が、家庭裁判所に対して「保全処分の申立て」を行います。

この申立てには保全の必要性や財産の状況、流失の恐れがあることを不動産登記簿謄本・銀行口座情報などで具体的に示す必要があります。

③   家庭裁判所による審査 家庭裁判所は申立て内容(財産の流失や処分のリスク、保全処分で相続人の公平を保てるかなど)を審査します。
④   保全処分の決定 家庭裁判所が保全処分の必要性があると認めた場合、財産の保全措置が決定されます。

(具体的例:不動産の所分禁止・預金口座の凍結・株式の処分禁止など)

⑤   保全処分の執行 保全処分の決定後処分が執行され、不動産の場合は処分禁止の登記、口座の場合は凍結で財産が処分、流失することを防ぎます。
⑥   遺産分割審判の開始 保全処分は一時的な措置となるため、遺産分割審判が開始されます。

審判の結果に基づいて正式な遺産分割が行われます。

⑦   保全処分の解除 遺産分割が決定されると保全処分は解除され、財産は各相続人に分割されます。

保全処分は相続財産の公平な分割を確保するために重要な措置ですが、財産の管理・運用に制約が生じるため相続人の間での話し合いが円滑に進む場合は必要ありません。

 

 

保全処分が申請できる時期

遺産分割審判前の保全処分が申請できるのは、遺産分割の申立てが行われてから審判が確定するまでの期間です。

 

遺産分割の申立て後

相続人は、家庭裁判所に遺産分割の申立てを提出した後で保全処分を申請できます。

これは、遺産分割の手続きが進行している間に相続財産が不正に処分される恐れがある場合に保全処分が必要となることがあるためです。

 

審判が確定する前

審判が確定する前に相続財産の流失や、勝手に処分される恐れがあると家庭裁判所に認められた場合は、いつでも保全処分の申請が可能です。

 

至急対応したい状況が生じた場合

保全処分が急がれるのは、財産が処分される可能性が高い緊急の状況です。

相続人の一部が銀行口座の預金を引き出す恐れがある、不動産を売却しようとしているなどの場合は、家庭裁判所に迅速な対応を求めることができます。

 

注意点

保全処分の申請は、遺産分割の申立てが行われていることが前提です。

単独での申請は認められていません。

 

 

エピローグ

遺産分割審判前の保全処分は、相続に関するトラブルや権利侵害を防ぐための手段です。

具体的には、遺産分割が正式に決定する前に相続財産が勝手に処分されたり、価値が減少したりしないように保全することが目的となります。

被相続人が築いた財産、家族にとっての大切な思い出をめぐって相続人同士が感情的に対立するのはとても悲しいことです。

相続人同士がトラブルにならないように、遺産分割がスムーズに終わるように、生前に遺言書の作成をされることをお勧めします。

遺言書に関する解説はコチラをご参照下さい。↓

リンク:(法的な効力を持った書類「遺言書とは」)

 

 

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