特別受益とは
目次
プロローグ
大切な人が亡くなられた際、亡くなられた人(被相続人)の遺産を相続人で分ける「遺産相続」があります。
相続人が複数いる場合は相続人の公平を目的として、遺産分割の基礎となる法定相続分を用いて相続の計算を行います。
※この法定相続分とは、法律上で相続人毎に相続分を決めた割合です。
法定相続分の詳しい内容はコチラをご覧ください。↓
しかし、相続人の中に贈与や遺贈などの特別な財産を得た人がいる場合、相続発生時に他の相続人との間で不平等が起こりトラブルや争いになってしまう可能性があります。
生前に贈与や遺贈などの特別な利益を得ることを「特別受益」といい、この特別受益は遺産分割の際に重要な決まりがあります。
今回は、特別受益について解説していきます。
特別受益とは
特別受益とは、亡くなられた人(被相続人)から贈与や遺贈を得た相続人の受益をいいます。
この特別受益は、相続発生時に他の相続財産と合わせて計算し、各相続人の相続分が決定されることになります。
このことを「特別受益の持ち戻し」といい、特別受益を得た相続人と、他の相続人が公平な相続を得られるように定めています。
特別受益の持ち戻し
特別受益の持ち戻しは、特別な受益がるある人と、受益がない人との不平等が生じないように定められており、相続発生時に財産が消失、減失していた場合でも相続時には贈与で得た財産が存在したものとして計算されます。
また、その評価額は相続発生時点の評価額となります。
相続人が複数いる場合、特定の人のみが被相続人から特別な受益があった場合にはトラブルや争いが起こってしまう可能性がありますので、特別受益の額は相続財産に持ち戻して計算し、特別受益を得た人はその相続財産から特別受益分を差し引くことになります。
例えば、相続財産が4,500万円、子供A、子供B、子供Cの3人でAが800万円、Bが700万円の生前贈与を得ていた場合
本来、子供3人の法定相続分は4,500万円×800万円+700万円=6,000万円を均等に分割してABCとも2,000万円ずつの相続財産があります。
しかし、AとBは生前贈与を得ていたので特別受益の持ち戻しがあります。
Aの場合 2,000万円–800万円=1,200万円
Bの場合 2,000万円–700万円=1,300万円
Cの場合は特別受益がありませんので、そのまま2,000万円が相続分となります。
特別受益となる遺贈と贈与
相続人の中で、特定の相続人に対してのみ贈与などを行なった場合で、特別受益に該当するものは、遺贈や節税対策として生前贈与を行なった財産となります。
※相続人全員が贈与などで財産を得た場合には特別受益に該当しません。
遺贈は基本的に全て特別受益に該当します。
生前贈与の場合は、結婚に関して贈与された財産、生計の元手として贈与された財産です。
但し、生活費、医療費、死亡退職金、弔慰金などは特別受益に該当しません。
結婚に関しての贈与
支度金や持参金など財産を先に渡したような贈与となりますので、結納金や挙式費用などはこれに該当しません。
生計の元手となる贈与
独立した子供に対する贈与で、住宅購入資金や増改築費用、事業資金など、生活の基盤となるものがこれに該当します。
※相続放棄を行った人の場合、被相続人から贈与を得たとしても特別受益には該当せず、特別受益の持ち戻しの対象とはなりません。
特別受益についての条項では具体的な基準が記載されておらず、特別受益に該当するかどうかは裁判所での判断となります。
特別受益証明書
被相続人から特別受益を得た相続人が「遺産相続は不要」ということを書面に記したものです。
主に、不動産の相続登記などで利用され、特別受益証明書があれば特別受益を得た人を除いて遺産分割協議を行うことができます。
※法定相続人が2人の場合で、そのうちの1人が特別受益証明書の提出を行った場合には、遺産分割協議は不要となります。
特別受益に関する法改正
法改正前は、遺留分の計算の際には特別受益について期限は設けられていませんでした。
しかし、2019年7月の法改正により、遺留分の計算上特別受益は原則として相続発生時から10年以内の生前贈与のみという期限が設けられました。
また、婚姻20年以上の夫婦が配偶者に居住用の建物または土地を贈与、遺贈した場合には、特別受益の持ち戻し免除の意思が受け入れられるようになりました。
エピローグ
今回は、特別受益についてお話ししました。
特別受益は相続時の遺産分割において重要なものです。
しかし、特別受益の判断基準は断定されたものではなく、各個人の理由を考慮して該当するかどうかを判断されます。
また、持ち戻し免除の意思があったかどうかも重要となります。
特別受益は贈与を行う場合難しいものとなり得ますので、贈与を行なっても贈与税の負担で贈与の意味が無くなってしまわないようにしっかりと対策を行うことが大切です。
贈与や遺贈を検討されている方は、法の専門家である司法書士・弁護士・税理士に任せることをお勧めします。
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