法定相続情報証明制度について
目次
プロローグ
不動産・銀行口座・株式などあらゆる相続手続きや名義変更手続きを行う際には、まず故人と相続人の関係を証明しなければならず、戸籍謄本・除籍謄本・改正戸籍などあらゆる公的な書類が幾度も必要となります。
そこで、相続人の負担を軽減するために「法定相続情報証明制度」という制度が新設されました。
法定相続情報証明制度とは
法定相続情報証明制度とは、法務局※に必要な書類を提出し故人と相続人の関係が証明できる制度です。
不動産の名義変更・預貯金や証券の名義変更や払戻し・自動車の名義変更などに利用できる証明書を無料で交付してもらう事が可能になります。
交付までに必要な書類を揃えることが必要になりますが、一度交付されると5年以内であれば何度でも証明書を再発行してもらえます。
※法務局とは登記事務を担当する機関のことで、登記所や地方法務局・支局・出張所と言う場合もあります。
法定相続情報証明制度が設けられた背景
以前の記事(相続登記の義務化について)でも述べていますが、不動産(土地)を所有している方が亡くなられた場合、その不動産を遺産として相続された方は相続登記※(名義の変更)をしなければなりません。
しかし、現在の相続登記の手続きが義務ではないため相続登記の手続きをしていない方も多く、手続きがされていない不動産(土地)は所有者が分からなくなり、公共事業や復興事業が阻害されるなど深刻な問題となっているのです。
また、相続の手続きも困難でなかなか手続きを済ませていないという方も少なくありません。
そこで、相続登記のスムーズ化と相続の手続きによる負担を軽減する目的として、2017年より「法定相続情報証明制度」が設けられました。
相続登記の義務化についての詳しい説明はコチラをご参考下さい↓
※2024年6月より「相続登記」は義務化となります。
法定相続情報証明制度の申請に必要な書類
では、法定相続情報証明制度に必要な書類とはどんなものかみていきましょう。
・故人の戸籍謄本・除籍謄本
・故人の住民票除票(除票できない場合は戸籍の附票)
・相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本
・相続人の身分証明書(マイナンバーカード・免許証・住民票など)
・法定相続情報一覧図※の作成(法務局のホームページに様式、記載例があります)
上記書類が揃ったら申出書に必要な事項を記入し、併せて法務局へ申出します。
(申出は郵送でも可能です。)
申出場所は、故人の本籍地/故人の最後の住所地/申出人の住所地/故人名義の不動産がある所在地のいずれかを選択することができます。
申請は、司法書士などの専門家に依頼し代理申請を行うことが可能です。
※法定相続情報一覧図とは
故人と相続人との関係を一覧図にまとめたもので家系図のようなものになります。
一覧図を基に、法務局が法定相続人について証明します。
法定相続情報証明制度の利用についての条件
法定相続情報証明制度を利用するには、故人と相続人全員の戸籍が必要となります。
相続人に日本国籍をお持ちでない方がいる場合には法定相続情報証明制度は利用できません。
故人については、死亡された時点で日本国籍があったとしても出生時まで戸籍がさかのぼれない場合、法定相続情報証明制度を利用する事ができません。
また、一部の銀行では法定相続情報証明制度の対応をしていない場合がありますので、対応していない場合は戸籍謄本などの書類を揃え、銀行窓口で手続きを行うことが必要となります。
法定相続情報証明制度についてのメリットとデメリット
メリット | デメリット |
・法定相続情報証明制度の利用が無料 ・5年間再発行が可能になる ・相続の手続きが容易になる ・郵送でも申請できる ・専門家による代理申請が可能である
|
・最初に戸籍等公的書類を揃えるのが困難 ・法定相続情報一覧図の作成が困難 ・手続きによっては利用できない場合がある |
メリットとデメリットを書き出してみました。
では、どんな場合に手続きをした方が良いと思われるのでしょうか。
不動産や銀行・株式・など名義変更が必要な遺産が複数ある場合
複数の手続きが必要な場合は、法定相続情報証明制度を利用することで同時に手続きができますので、最大のメリットとしては何度も公的書類を提出せず時間や手間を省略できるところです。
反対に、相続の手続きが2~3箇所ほどであれば、法定相続情報証明制度を利用せず手続きをされた方がスムーズでしょう。
エピローグ
今回は、法定相続情報証明制度についてお話しました。
相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。
それまでにあらゆる手続きを済ませなければならず、時間ばかりが過ぎ心労も重なり大変な思いをされると思います。
法定相続情報証明制度の最大のメリットは時間の短縮です。
実際に、申出を行うまでに一度だけ公的書類を揃えれば、何度も公的書類を揃える必要がなくなるのもメリットといえます。
法定相続情報証明制度があまり良く分からない方や利用を迷っている方は、司法書士などの専門家に相談し、よく理解して利用されることをお勧めします。
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