トラブルを回避! 遺言書でトラブルにまってしまうケースと対処法
目次
プロローグ
遺言者が亡くなった後で効力を発揮する遺言書。
遺言書は遺された相続人の間で争いが起きないように、自身の想いを書面に記す大切な手段です。
しかし、遺言書作成の際の不備や内容が不明瞭では、遺された相続人の間でトラブルになり兼ねません。
また、自筆で書いて自宅などに保管する遺言書は紛失や隠匿などのトラブルが発生するリスクが高まってしまいます。
今回は、遺言書でトラブルになりやすいケースと対処法を解説します。
遺言書でトラブルになってしまうケースと対処法
遺言書が作成されていない場合、相続人は全員参加のもと遺産分割協議で話し合い財産を分割しなければなりません。
遺産分割協議で相続人の一人が自分の取り分について主張を続けてしまうと、遺産分割協議はいつまで経ってもまとまらずトラブルになってしまうケースも少なくありません。
被相続人は、遺された相続人に揉めてほしくない、余計な時間を使わせたくないという思いから遺言書を作成するケースが多いですが、その遺言書がトラブルを招いてしまうこともあります。
遺言書が正式に作成されていない
遺言書は法律的に定められた形式で作成しなければ無効となってしまいます。
例えば、自筆証書遺言の場合、遺言書の全文・日付・氏名を自筆で作成する必要があります。
このひとつでも欠けてしまうと遺言書の効力は失われ、財産は法定通りに分割されます。
【対処法】遺言書を正しい形式で作成するためには、法律の専門家である弁護士や司法書士等に相談する、公証役場で公正証書遺言を作成するのもひとつです。
遺言書の内容が不完全・不明瞭
遺言書の内容で、財産の内容が抽象的である、情報が欠けているなどがあった場合、相続人の解釈の不一致でトラブルになるケースがあります。
例えば「次男に地元の家屋を譲る」と記載しただけでは、誰のことを指しているのか、地元も家屋とは?といった点で揉めてしまうこともあります。
【対処法】財産の特定については補足として明確にし「地元の家屋」などの曖昧な表現ではなく「○○県△△市●●区○○1-2-3」といった具体的な住所を記載することが大切です。
また、保有者や連絡先は相続人ごとに記載しましょう。
判断能力が低下した状態で遺言書が作成された
遺言書の作成は民法により、満15歳以上であること・遺言書の作成に意思能力があることと規定されており、この要件を満たさず作成された遺言書は無効になります。
例えば、遺言者が認知症などにより判断能力が低下していた場合、遺言能力※について問われ、裁判所から遺言書の内容は無効と判断される可能性もあります。
また、実際の判断能力の有無は遺言者にしか分からないため判断が困難です。
病院や施設の証言が有効な場合もありますが、第三者が証明できる書類がないことも多くトラブルに発展しやすいケースといえるでしょう。
※遺言能力…遺言の内容とその法的効果を理解し判断できる意思能力
【対処法】遺言書の作成時に高齢や認知症の症状があるなどの場合は、きちんと医師の診察を受け遺言者の状態を後で証明しておけるようにすることが大切です。
また、遺言書の内容は何度も書き直すことが可能ですので、早めに作成する方が望ましいでしょう。
遺言書が複数存在し、内容も異なっている
遺言書が複数存在する場合、内容が矛盾していなければどの遺言書も有効となります。
しかし、遺言書の内容が1通目には「〇〇の財産は長男●●へ、□□の財産は次男■■へ相続する」と記載してあり、2通目の遺言書には「○○の財産は次男■■へ、□□の財産は三男▲▲へ相続する」と書いてあった場合、1通目と2通目で内容が矛盾しているため、後に書かれた遺言書が最新の遺言書として有効となります。
内容が矛盾していない遺言書が複数あった場合は、どちらも有効となります。
【対処法】「遺言書を作成したら何枚にもなった」 などの場合は、完成した遺言書をホッチキスなどでひとつにまとめ、封筒に入れておくと良いでしょう。
また、内容を変更するために新たな遺言書を作成した場合は、以前に作成した遺言書は破棄して、再度作成した方が安全で確実です。
トラブルになりやすい事例は他にもあります。
一部の相続人のみに相続する旨を記載した遺言書を作成した場合…遺留分侵害額請求により紛争になる可能性もあります。
自筆証書遺言を作成していた場合…紛失や破棄されてしまった、見つけてもらえなかったといったトラブルの可能性もあり、遺言書を勝手に開封されたというトラブルが発生する可能性もあります。
また、遺言書がないと思って遺産分割協議を行ったが、その後で遺言書が発見されたといったケースもあります。
遺言書を巡りトラブルが発生してしまうと…
遺言書を巡りトラブルが発生してしまうと相続人同士の関係が悪化するだけでなく、手続きが長期化し精神的・経済的な負担も大きくなります。
相続人の間で遺言書を巡りトラブルになり、遺言が無効であることを裁判所に確認してもらうための裁判手続き遺言の無効確認訴訟を行うとなった場合、法律上先ず調停を先に行わなければなりません。
さらに、遺言の無効が認められたとしても、その後に遺産分割調停や審判が必要となるため手続きには長い時間がかかり早期解決は困難です。
遺言者は相続人がトラブルにならないように配慮し作成することが大切です。
また、遺言書は曖昧な表現や遺留分を侵害するような配分は避け、法的な様式に沿って作成しましょう。
遺言書の作成に不安がある方は、法律の専門家(弁護士・司法書士等)に相談されることをお勧めします。
エピローグ
遺言書を遺す一番の理由は、家族や親族といった相続人の遺産を巡るトラブルを回避するためといった、遺された相続人を想う気持ちから作成されます。
適切に作成された遺言書は、円満な相続を実現し大切な家族の未来を守るための重要な手段となります。
相続が争続とならないよう、ご留意いただければ幸いです。
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