相続放棄できない!? 相続放棄が認められないケースとポイント
目次
プロローグ
家族など大切な人が亡くなった場合、ほとんどのケースで相続が発生します。
相続とは被相続人のすべての権利や財産を相続人で受け継ぐことですが、プラスの財産だけでなくマイナスの財産が遺されている場合もあります。
以前ご紹介した『相続財産を受け継がない「相続放棄」と相続財産を受け継ぐ「単純承認・限定承認」』では、相続の方法と相続放棄の流れや必要書類の収集などについて解説しました。
今回は、相続放棄ができないまたは認められないケースと、相続放棄に関するポイントを解説します。
相続放棄に必要な書類と期限
相続放棄とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて相続をしない相続権の放棄です。
各相続人で財産を放棄することが可能ですが、相続放棄を行う場合は申述期間内に相続放棄申述書を作成し、必要書類とともに家庭裁判所に提出しなければなりません。
申述期間(熟慮期間)…相続開始を知った日から3ケ月以内(民法915条1項)
相続放棄申述書…相続を放棄する意思を家庭裁判所に申立てるための書類
申述人や被相続人の情報、相続の開始を知った日などを正確に記載する必要があります。
必要書類…相続放棄申述書の他に、被相続人の戸籍謄本、戸籍の附票または住民票除票・相続放棄する相続人の戸籍謄本(家庭裁判所が必要と判断した場合は、その他の書類も必要になる場合があります)
相続放棄が認められないケース
相続放棄の申述をした場合そのほとんどが認められ、却下率は0.2%程度と非常に低くなっています。
しかし、単純承認の成立・熟慮期間の経過・必要書類不足(照会書の無回答)は相続放棄が認められない可能性があります。
単純承認の成立
民法921条では、単純承認したとみなされる法定単純承認という規定があります。
相続財産の全部または一部を処分(相続財産の売却・貸付金の回収・財産の第三者への譲渡など)した場合。
また、被相続人宛の請求書の支払や、被相続人の預貯金の払戻し、遺産分割協議書の署名・押印、相続財産の隠蔽や不正利用、被相続人名義の不動産・自動車・携帯電話などの名義変更も法定単純承認になる可能性があります。
※但し、財産の維持や管理のための行為は処分対象にはなりません。
熟慮期間経過
法定期間(3ケ月以内)に相続放棄や限定承認を選択しなかった場合は単純承認したとみなされます。
必要書類の不足(照会書の無回答)
通常は提出した書類が不足した場合や、不備があった場合は家庭裁判所から連絡が入ります。
転籍などで複数の戸籍が必要な場合もあり、書類を収集している間に熟慮期間が過ぎてしまわないよう不足書類があった場合は早急に収集して提出しましょう。
また、被相続人が亡くなった事実確認や最後の住所地、相続放棄の意思などを確認する相続放棄照会書は、回答して返送しなければなりません。
相続放棄照会書を返送せずそのままにしていた場合も相続放棄が棄却されてしまう場合があります。
相続放棄に関するポイント
相続放棄が認められないケースでは「行動」に注意する必要があります。
遺産分割協議書に署名・押印してしまった
遺産分割協議書は相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意内容を文書にまとめるものです。
一方で、相続放棄は法的手続きを経て相続権そのものを放棄することです。
遺産分割協議書に署名・押印したとしても、相続権の放棄を意味するわけではありません。
また、相続財産を受け取らないと表明しても相続の義務が無くなるわけではありません。
相続放棄を決めている場合は遺産分割協議には参加せず、参加しても安易に署名・押印をしないよう注意しましょう。
相続を放棄するか限定承認にするか決める前に、被相続人の財産を使ってしまった
被相続人の財産を利用したり、処分した場合は法定単純承認とみなされます。
この場合、家庭裁判所に相続放棄の申述をしても受理されなくなってしまいます。
相続放棄を検討している場合は特に注意が必要です。
また、被相続人の財産を勝手に利用することは不法行為に該当します。
被相続人宛の請求書を支払ってしまった
被相続人宛に送付された請求書などを支払った場合は、すべての財産を受け継いだとみなされます。
善意で行った行動でも、法定単純承認とみなされますので注意しましょう。
このように、意図せず相続放棄が認められなくなるケースがあります。相続開始後は慎重に行動することが重要です。
また、被相続人が遺した財産は熟慮期間内に把握することをお勧めします。
エピローグ
民法915条では、相続を放棄したい人のために相続人が財産の相続を拒否することが認められています。
相続放棄を行うと、最初からその相続人はいなかったものとして扱われ、遺産分割協議に参加する必要もありません。
しかし、相続放棄の手続きには熟慮期間という3ケ月の期限があり、この期間を過ぎると手続きができなくなりますので注意が必要です。
相続放棄の手続きには、戸籍書類の収集や家庭裁判所への提出書類などがあります。
ご自身で手続きが難しい場合は、法の専門家(弁護士・司法書士等)に相談されることをお勧めします。
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