相続で得た不動産の売買について
目次
プロローグ
身近な人が亡くなられて相続が発生した場合、法定相続人は相続財産を譲り受けると思いますが、その際に不動産を相続することは少なくありません。
相続した遺産が多額の場合だと、相続税の発生や、不動産の名義変更、売却などでも様々な課税がある場合があります。
この記事では、相続で得た不動産の売買について解説していきます。
不動産の相続から売却までにかかる税金の種類
不動産を相続した際は、その不動産の額に伴った相続税が発生する可能性があります。
また、相続した不動産の名義変更(相続登記)には登録免許税が発生します。
不動産を売買する際には、売買契約書で印紙税、売買後には譲渡所得税・住民税、所得税に加算される復興特別所得税など様々な課税があります。
相続税
相続税は、相続した財産が相続税の基礎控除を超えた分に対して課税されます。
基礎控除は3.000万円+600万円×法定相続人数です。
登録免許税
登録免許税は、不動産の名義変更(相続登記)を行った場合に発生する税金で、登記の種類毎に税率が異なります。
登記の種類 | 税率 |
相続による住宅の移転登記
または土地の移転登記 |
0.4% |
中古住宅を売買で取得した場合の移転登記 | 2.0% |
土地の売買での移転登記 | 2.0% |
印紙税
印紙税は不動産を売買契約した際に契約書に貼って納税するもので、契約金額よって印紙税額が異なります。
契約金額 | 印紙税額
(軽減税額)※2024年3月まで |
500万円~1.000万円以下 | 1万円(5,000円) |
1.000万円~5.000万円以下 | 2万円(1万円) |
5.000万円~1億円以下 | 6万円(3万円) |
1億円~5億円以下 | 10万円(6万円) |
5億円~10億円以下 | 20万円(16万円) |
10億円~50億円以下 | 40万円(32万円) |
※一部抜粋
譲渡所得税・住民税・復興所得税
不動産を売却した際に、売却益(譲渡所得)があった場合は譲渡所得税や住民税、復興所得税の課税対象となります。
また、短期譲渡所得(5年以下)で30%、長期譲渡所得(5年以上)で15%という税率があります。
例えば、相続後5年以内の売却
譲渡収入金額(不動産を売却した金額)が2.000万円
被相続人が購入した金額が1.500万円(登録免許税6万円)
譲渡費用(仲介手数料62万円・印紙税2万円)の場合
2.000万円−(1.506万円+62万円+2万円)=430万円
430万円−30%=129万円で、譲渡所得税は129万円となります。
住民税は、短期譲渡所得(5年以下)で9%、長期譲渡所得(5年以上)5%となっていますので、住民税は430万円×9%=38万7000円となります。
復興所得税は、東日本大震災後に定められた所得税で2037年まで所得税に2.1%が加算されるものです。
譲渡所得の場合、短期譲渡所得(5年以下)の税率30%×2.1%=0.63%
長期譲渡所得(5年以上)の税率15%×2.1%=0.315%が課税されますので、
復興所得税は430万円×0.63%=2万7090円となります。
上記で計算した税額を合わせると、
登録免許税:6万円、印紙税:2万円、譲渡所得税:129万円、住民税:38万7000円、復興所得税:2万7090円の合計178万4090円の課税があり、相続人全員で納税することになります。
また、相続した不動産を売却した場合は確定申告をしなければなりません。
被相続人の居住用財産の売却の特例(2023年12月31日まで)
相続や遺贈で被相続人の居住用家屋や敷地を売却し、一定の要件※を満たす場合は譲渡所得の金額から最大3.000万円の控除が受けられます。
※昭和56年5月31日以前に建てられたもの
区分所有建物登記がされていない
(分譲のマンションなど複数の住居を1つの棟として登記されていない)
相続発生前に被相続人以外の人が住んでいない
譲渡所得税額を計算しましたが、この特例に該当する人は譲渡所得税129万円から3.000万円を差し引くことができますので、譲渡所得税や住民税は非課税となります。
但し、この要件を満たし譲渡所得が発生しない場合でも確定申告は必要です。
取得費の特例
相続や遺贈で取得した建物や土地、株式などの財産を一定期間内※に譲渡した場合、相続税額の一定金額を譲渡資産の取得費として加算できます。
※相続や遺贈で取得した財産であること
※その財産に相続税が課税されていること
※相続発生の翌日から3年10カ月以内(一定期間である3年と相続税の申告期限10か月以内)に譲渡していること
この一定期間内の要件に該当している場合、
課税譲渡所得金額は、譲渡(売却)価格-(取得費+譲渡費用+売却した不動産の相続税額)
となり、譲渡所得金額の節税効果が期待できます。
この特例を受けるためには、相続財産の取得費に加算される相続税の計算書、譲渡内訳書を添付して確定申告を行うことが必要です。
エピローグ
今回は、相続で譲り受けた不動産の売買についてお話しました。
相続で不動産を譲り受けた場合、登記申請や確定申告などの様々な手続きは、その不動産を相続した相続人が行います。
しかし、不動産に係る手続きには専門的な知識や時間が必要になり、煩わしい手続きとなり得ます。
相続登記の手続きを専門家に任せる場合、司法書士のみが手続きを行えますので、相続登記から売買完了までを任せることができます。
不動産の相続手続きは、法の専門家である司法書士に任せることをお勧めします。
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