相続が発生した後の年金の手続き~遺族年金制度~
目次
プロローグ
皆さんは、相続が発生した後に行う遺族年金制度をご存じですか?
遺族年金の手続きを行うことで今後の生活に必要なお金を受け取れる場合があります。
今回は、相続が発生した後に必要な手続きと、未支給年金、遺族年金制度について解説します。
公的年金を受給していた人が亡くなった場合の手続き
年金を受給していた方が亡くなられた場合は「年金受給者死亡届(報告書)」を10日以内(国民年金は14日以内)に年金事務所か年金相談センターに提出します。
※この手続きを失念して年金受給を続けた場合、不正受給とみなされる可能性もありますので注意が必要です。
日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合は原則として年金受給者死亡届を省略できます。
※マイナンバーの登録状況については「ねんきんネット」で確認するか、お近くの年金事務所にお問い合わせください。
受給者死亡届の提出に必要なもの
・被相続人の年金証書
・死亡が確認できる書類(戸籍抄本、住民票の除票、死亡診断書など)
各年金の届出先
・厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金、老齢基礎年金の場合は、届出者の住所地を管轄する「年金事務所」、「年金相談センター」へ届出ます。
・障害基礎年金、遺族基礎年金、老齢福祉年金のみの場合は、被相続人の住所地の「役所保険年金課年金係」へ届出ます。
未支給年金について
被相続人が生前にまだ受け取っていない年金がある場合、被相続人と生計を共にしていた遺族が未支給分の年金を受け取ることができます。
受け取ることができる遺族の範囲と順位は、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹、⑦それ以外の三親等内の親族となります。
なお、届出が遅れ死亡日の翌日以降に年金を受け取った場合その年金は後日返還となります。
受取手続きに必要なもの
被相続人の年金証書、住民票除票、住民票(請求者の世帯全員の住民票と被相続人が除籍された住民票)、被相続人と請求者の関係がわかる戸籍謄本、受け取りを希望する金融機関の通帳(請求者名義のもの)、印鑑。
※住民票の住所が被相続人と違う場合は、生計同一関係に関する申立書の提出が必要です。
必要な書類を揃え、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金、老齢基礎年金の場合は、請求者の住所地を管轄する「年金事務所」へ提出します。
障害基礎年金、遺族基礎年金、老齢福祉年金のみの場合は、請求者の住所地の「区役所保険年金課年金係」、「振興事務所振興課」へ提出します。
※共済組合の各種年金受給の方は、「各共済組合」でご確認ください。
各書類は日本年金機構のHPに記載されています。
日本年金機構HP
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html
遺族が受け取れる年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)
遺族年金とは、公的年金の被保険者が亡くなった場合に一定の要件を満たす遺族が受け取ることができる年金です。
未支給年金との大きな違いは、未支給年金が期限付き(1~3ケ月)の支給に対して、遺族年金は一定の要件を満たした場合、生涯受給することができます。
また、遺族年金には2つの種類があり、被相続人が自営業だった場合は遺族基礎年金(国民年金)のみ、会社員だった場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。
遺族年金は受給権者の固有の権利として受け取るものであるため、相続で受け取るというものではありません。そのため、相続放棄して相続人ではなくなったとしても受け取りが可能です。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた方が亡くなられた際に子供のいる配偶者や子が受け取ることができる年金です。亡くなられた方の職業に関わらず支給されます。
遺族年金(国民年金) | |
支給要件 | ・基礎年金の受給資格期間が25年以上ある、または25年以上の受給資格期間で受給していた
※死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除を含む)が加入期間の2/3以上ある ・基礎年金の被保険者で60歳以上65歳未満である ・日本に住民登録がある |
対象者 | ・基礎年金に加入していた被保険者に生計を維持されていた遺族
・子がいる配偶者 ・子 ※子のいない配偶者は対象外となります また、子がいる場合においても、子が18歳到達の年度末を過ぎると対象外となります |
年金額 | 基礎年金額は子の人数によっても異なりますが、2024年度の基礎年金額は以下の通りです
・昭和31年4月2日以降生まれの場合 816,000円+子の加算額 ・昭和31年4月1日以前生まれの場合 813,000円+子の加算額 ※子の加算額は1人あたり234,800円で、3人目以降は78,300円が加算されます (受給額は毎年更新されます) |
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、会社員など厚生年金に加入していた人が亡くなられた際に受け取ることができる年金です。遺族基礎年金の支給対象であった場合、遺族基礎年金と合わせて支給されます。
遺族厚生年金(厚生年金) | |
支給要件 | ・厚生年金の被保険者期間中で、初診日のある傷病が原因で初診日から5年以内に亡くなった
・老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある老齢厚生年金を受給している ・1級または2級の障害厚生(共済)年金を受給している、または受給権がある |
対象者 | 厚生年金に加入していた被保険者に生計を維持されていた遺族
・配偶者や子 ・父母、孫、祖父母 ※子がいない配偶者でも対象者となりますが、子がいない30歳未満の配偶者は5年間 の有期年金となります ※配偶者を除く受取人については年齢制限があります |
年金額 | 遺族厚生年金の受給額は老齢厚生年金の3/4となります
受給額については複雑な計算が必要となりますので年金事務所へお問合せください |
厚生年金保険料は会社が納めるので滞納することはありませんが、就職前または転職のタイミングや退職後の期間で国民年金保険料の滞納がある場合は注意が必要です。
中高齢寡婦加算
遺族基礎年金は、子がいない妻は対象外となります。
また、子がいてもその子が18歳、または20歳(1・2級の障害がある子)を迎えた年度末を過ぎると受け取ることができなくなります。
そのため、夫が亡くなった際に40歳以上で子のいない妻の場合、受け取る遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が40歳から満65歳まで加算されます。(2024年度は612,000円)
以下のいずれかの条件に当てはまる妻が対象です。
・40歳以上65歳未満で同一生計の子がいない。
・遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻の場合、子が18歳到達年度末に達した(障害がある場合は20歳)ため遺族基礎年金を受給できなくなった。
※要件を満たしている場合は自動的に受け取ることができますので手続きを行う必要はありません。
経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算は妻が65歳になった時点で終了します。
そうなった場合、妻の生年月日によっては老齢基礎年金額が少なくなってしまう場合があり、それをカバーすることを目的として経過的寡婦加算という制度があります。
対象者が限られているうえ少し複雑な制度ですので、該当する可能性のある人は年金事務所等に確認されるといいでしょう。
公的年金に相続税はかかるの?
公的年金は前月分と前々月分を後払いで受け取ることになっていますので、年金の受給者が亡くなられた際は未支給年金が発生します。
この未支給年金に対して相続税は発生しません。また、相続放棄の手続きをしていても公的年金は受け取ることができます。
※保険会社と契約する「個人年金」や退職金を年金形式で受け取る「企業年金」は相続税の対象となりますので注意が必要です。
エピローグ
ご家族が亡くなっても諸々の手続きを早急にしなければならないのは辛いことですが、年金の手続きによって未支給年金や条件によっては遺族年金を受け取ることができます。
今後の生活に必要になるお金ですので期限内に手続きを終えることが大切です。
しかし、年金の種類もたくさんあり相続税だけでなく所得税や贈与税が発生するケースもあります。
不安や疑問がある場合は法の専門家(弁護士・司法書士・税理士等)に相談してみましょう。
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