代償分割についての基礎知識
目次
プロローグ
遺産分割の方法のひとつとして、代償分割というものがあります。現物で分割することが難しい遺産(建物・土地といった不動産など)を相続する場合に、法定相続分に応じて代償金を支払い清算する方法です。
遺産分割の種類
遺産分割は4種類ありますが、主な遺産分割の方法は「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つです。
「現物分割」は遺産を現物のままの状態で、誰が相続するか決める方法です。
「代償分割」は一人または数人の相続人が不動産などの遺産を現物で取得し、その取得した
人が他の相続人に不動産の代わりとなる代償金を支払う方法です。
「換価分割」は不動産などを売却して得た現金を相続人の間で分け合う方法です。
その他、「共有分割」といって、不動産などの遺産を分けずに相続人の間で共同所有する方法もありますが、これは不動産をどうするか一人で決めることができなくなるためデメリットが多く、あまりお勧めできません。
代償分割の方法
遺産分割協議では相続人全員で代償分割を取決め、取決めた内容を遺産分割協議書にまとめて、不動産などを相続した人が他の相続人に対して代償金を支払うことで完了します。
この過程の中では相続人全員の合意を得ることが特に大切で、ここがうまくいかないと代償分割を行えません。
相続人全員の合意を得るには適切な不動産の評価と、全員が合意できる代償金の支払い方法を決める必要があります。不動産の評価額で相続人同士意見が対立することもありますし、支払いの期限や、一括で払えない場合分割払いできるかといった支払い方法などで意見が分かれることもあります。こういった点を相続人の間でよく話し合い、意見をすり合わせることが重要です。
相続人の間で取決めが行われたら遺産分割協議書を作成します。このとき代償分割に関する記載をしないと代償金の支払いが贈与とみなされ、贈与税を課せられてしまう恐れがあるため注意が必要です。
なお、代償財産として支払うものは現金に限らず、土地・建物・権利でもかまいません。その場合の注意点として、土地や建物で支払うと不動産取得税や登録免許税など別途費用が必要となることがあります。土地や建物を代償する場合は専門家へ相談することをお勧めします。
代償分割のメリットとデメリット
メリット
不動産を平等に分割できること、不動産を売却することなくそのままの形で残せることが挙げられます。
現物分割だと不動産のような分けることのできない遺産がある場合は相続人間で不公平になってしまいますが、代償分割だと代償金が支払われるため公平性が保たれます。
また、換価分割のように不動産を売却することなくそのまま受け継ぐことができるので、不動産という資産を失うことなく取得することができます。
デメリット
デメリットは、不動産の評価額で相続人同士意見の食い違いが出る可能性がある点と、代償金を用意できなければ代償分割ができない点です。
不動産の評価方法は一つだけではないため、代償金を支払う人は代償金額を抑えたいので低い見積もりを出し、代償金を受け取る人は高い見積もりを出す、というように相続人の間で対立し揉め事に至る可能性があります。
また、代償金を支払える資力がない場合は代償分割そのものを行えません。
代償分割の相続税の計算
代償分割の対象となった土地の評価額として、相続税評価額を使ったか、代償分割時の時価を使ったかによって、相続人ごとの課税価格が変わります。
相続税評価額を使った場合
代償金を交付した人の課税価格 (相続税評価額)-(支払う代償金の額)
代償金の交付を受けた人の課税価格(相続税評価額)+(支払われる代償金の額)
例として相続人Aが相続税評価額3600万円の土地を取得し、相続人Bに1800万円の代償金を支払うと決められたと仮定して計算してみます。
Aの課税価格 3600万-1800万=1800万円
Bの課税価格 1800万円
代償分割時の時価を使った場合
代償金を交付した人の課税価格
(相続税評価額)―(支払う代償金の額)×(相続税評価額÷代償分割時の時価)
代償金の交付を受けた人の課税価格
(相続税評価額)+(支払われた代償金の額)×(相続税評価額÷代償分割時の時価)
相続人がAとBの二人、相続税評価額3600万円、代償分割時の時価4000万円を基に代償金1800万円の支払いが決められたとすると
Aの課税価格 3600万-1800万×(3600万÷4000万)=1980万円
Bの課税価格 1800万×(3600万÷4000万)=1620万円
課税価格の合計はどちらの計算を使った場合でも同じですので、相続税の総額は変わりません。
エピローグ
不動産は分割しにくいため、相続時に不公平感を生みやすく揉めてしまう原因になる可能性が高い財産です。
不動産の相続は代償分割か換価分割をすることで公平に相続することができ、代償分割の場合は不動産を売却することなくそのまま受け継ぐことができます。
代償分割には代償を支払う資力が必要となるため、被相続人の生前や遺産分割協議前から相続について話し合い、早めに対策を講じることが重要です。
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