その手続き、期限は大丈夫? 相続手続きで特に気を付けたい期限

2024年7月24日

プロローグ

相続手続きの中には相続放棄や相続税の申告など、期限を過ぎると不利益を被ってしまう手続きもあります。

この記事では相続手続きの中でも特に気を付けたい期限について解説していきます。

 

相続の基本的なスケジュール

まずは相続の基本的な流れを確認しましょう。主なスケジュールは以下の通りです。

上の図で相続手続きのスケジュールを記していますが、特に気を付ける必要がある期限付きの手続きについて説明していきます。

3ケ月以内…相続放棄、限定承認

相続放棄は、被相続人が遺した遺産の権利を放棄することです。

限定承認は、被相続人が遺したプラスの財産を限度としてマイナスの財産も引き継ぐという方法で、いずれも相続開始を知った日から3ケ月以内に手続きを行わなければなりません。

期限を過ぎた場合、相続放棄または限定承認を行わなかったことになり、すべての財産を自動的に相続する単純承認になりますので注意が必要です。

 

4ケ月以内…被相続人の準確定申告

準確定申告とは、被相続人の生前における所得についての確定申告のことで、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に申告と納税を行わなければなりません。

判定基準となる金額は1月1日から亡くなられた日までの所得です。

準確定申告は原則として相続人全員が共同で行います。

誰でも申告が必要というわけではなく、通常の確定申告や相続税の申告のように「申告が必要な人」「申告しなくてもいい人」がいます。

中には「申告の必要はないけど、申告した方がお得な人」もいます。

【準確定申告が必要なケース】

・給与所得で給与が2,000万円を超える

・給与所得・退職所得以外の収入が20万円を超える

・公的年金などの所得が400万円を超える

・生命保険の満期金などの一時所得を受け取っていた

・土地や建物を売却して20万円を超える収入があった 等

※上記以外にも、2ヶ所以上から給与を受け取っていた場合や、事業所得・不動産所得があった場合にも準確定申告が必要になる場合があります。

 

【準確定申告が不要なケース】

・給与所得や公的年金が400万円に満たない

・給与所得で年末調整が完了している

・その他の収入の合計が20万円以下である

 

【申告は不要だけど、申告をした方がお得なケース】

以下に該当する場合は、準確定申告をすることで節税もしくは所得税の還付を受けられることがあります。

・10万円以上の医療費を支払っていた

・被相続人が勤務していた会社で年末調整を行っていなかった

・配偶者控除、扶養控除、雑損控除、寄付金控除等各種控除がある(この控除は被相続人が亡くなられた日の状況で判断されます)

還付される税金には「還付金※1」と「還付加算金※2」の2種類があります。

※1.還付金は、納め過ぎた税金を納税者に返還することで、還付金は被相続人に対して返還されるため相続財産に該当します。

※2.還付加算金は、還付金の利息のことで、還付加算金は被相続人の所得ではないため相続税の課税対象とはなりません。

 

10ケ月以内…相続税の申告

相続税の申告期限は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内」です。

相続税申告は書類の提出だけではなく納税も含まれます。(申告期限が土日や祝日の場合は、その翌日が申告期限になります。)

「被相続人が死亡したことを知った日」が相続人によって異なった場合は申告期限も別々になります。

また、申告期限の延長は、やむを得ない事情を除き認められませんので注意が必要です。

一日でも申告が遅れた場合「無申告加算税」が発生し、期限内に納税ができなかった場合は「延滞税」が発生します。

相続税に関する特例も使えなくなるので、申告期限には必ず間に合うように準備しましょう。

※相続税を払いすぎた場合は税務署への申告により還付を受けられます。

 期限は相続税の納付期限後5年間です。

 

1年以内…遺留分に関する請求

被相続人が遺した遺言が、相続人の最低限の取り分である「遺留分」を侵害する内容だった場合、遺留分を返すよう請求することができます。これを「遺留分侵害額請求権」といいます。

2019年7月1日の相続法改正以前の「遺留分減殺請求権」から変更されたもので、基本的な主旨は同じです。

遺留分侵害額請求は、遺留分に相当する金額を取り戻す権利となります。

不公平に遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害した相続人に侵害している遺留分について返してもらう、話し合いでまとまらなかった場合は家庭裁判所を通して調停手続きをすることになります。

この遺留分侵害額請求権には時効があります。

・相続開始及び遺留分を侵害する遺言や贈与があったことを知ったときから1年

・仮に何らかの事情で相続の発生を知らなかったとしても相続発生から10年

上記の期間を過ぎてしまうと権利は消滅してしまいます。

こういった場合には、相手に対し遺留分の侵害請求権の時効を止める旨を内容証明郵便で郵送することにより時効を止めることが可能です。

しかし、遺留分の請求権の時効を止めた後に発生する金銭の支払い請求権は5年で時効になるため、遺留分の請求権の時効を止めた後も素早く手続きを進める必要があります。

 

3年以内…生命保険の死亡保険金

生命保険の死亡保険金の請求期限は3年(簡易保険は5年)となっています。

やむを得ない事情で請求できていなかった場合、保険会社に事情を説明すると対応してくれることもあるので念のため連絡してみましょう。

 

 

期限内では難しい場合は?

様々な理由から期限内に手続きすることが難しい場合もあります。

以下で対処方法をご紹介します。

相続放棄・限定承認の延長

相続財産の調査が困難である、相続人が海外に住んでいるなどの理由で熟慮期間(3ケ月)以内に相続放棄や限定承認を行うことが困難な場合は、家庭裁判所で「熟慮期間延長の申立」手続きをすると期限が数ケ月延長される可能性があります。

この申立ても相続の開始があったことを知ったときから3ケ月以内に行う必要があります。

 

準確定申告・相続税の申告の延長

準確定申告の申告期限は4ケ月、相続税の申告期限は10ケ月です。

原則的に延長はできません。

しかし、期限延長の対象とならない手続きでも申告・納税が困難なやむを得ない理由がある場合には税務署へ申請することにより期限の延長をすることが可能です。

 

遺留分に関する請求の延長 

遺留分侵害請求権は、遺留分を侵害されていると知った日から1年、相続開始から10年、また金銭支払請求から5年で時効になってしまいます。

時効を止めるために相手に対して内容証明を送付することで時効を止めることができますので、自分に不利な内容の遺言があることを知った場合はすぐに権利を主張することが大切です。

 

 

エピローグ

相続手続きには期限付きものがたくさんあります。

相談したときには期限に間に合わなかった……ということにならないよう、相続手続きに悩んだら早めに専門家のサポートを受けることをお勧めします。

 

 

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