遺言書⑥ 特別方式

2021年9月22日

普通方式遺言と特別方式遺言の違い

 

普通方式遺言とは、「自筆証書遺言書」「秘密証書遺言書」「公正証書遺言書」の全部で3つの種類の遺言書のことをいいます。
これらの遺言書は、全般的に書き方などにいろいろ違いはあるのですが、遺言を作るためにしっかりと時間をかけることが必要であり、法的に有効性が可能な状態であるという部分では共通しています。

しかし、何が起こるかわからないのが人生です。突然死期が目の前に迫ってきたなど、緊急の状態で遺言を作成するということも十分にあり得ると思います。
このような状態で作成する遺言を「特別方式遺言」といいます。

ここでは特別方式遺言について見ていきます。

 

特別方式遺言とは

大きな違いは、普通方式遺言に有効期限はありません。
遺言を作成する人が新しい遺言を作成した場合に、より新しく作成した方側の遺言書が効果を持つことになり、前に書いた遺言は効果が無くなります。
しかしながら、特別方式遺言の場合においては、期限があります。
危難となるような事態に遭って特別方式遺言を作成しましたが、救助されたなどで命が助かり、六ヶ月経過した後においても、なお存命しているなら、その遺言は無効になります。

 

特別方式遺言の種類

特別方式遺言は特殊な状況で遺言を作成しています。緊急の時の特別措置といった意味合いの遺言書です。
ところで、この特殊な状況とはどのような状態のことなのでしょうか。また、その状態によって、それはどのような種類の遺言書という扱いになるのでしょうか。

危急時遺言(二種類)

危急時遺言とは、病気や怪我などにより、かなり生命の危機が迫っているような状態、もしくは、船や飛行機の事故などによって、差し迫った生命の危機が生じている状態で作成する遺言のことです。
危急時遺言には「一般危急時遺言」と「難船危急時遺言」という二種類のものがあります。

〇危急時遺言の効果
危急時遺言を残した人が亡くなった場合は、家庭裁判所で検認を行い、遺言内容を執行することになります。
病気や怪我が回復するなど、もう亡くなる心配がなくなった場合は、以下の条件等によって遺言書の効果がなくなります。
遺言者が生命の危機から逃れて、普通方式遺言を作成することが可能となった時から六カ月生存していた場合。

一般応急時遺言

この、一般危急時遺言というのは、病気や怪我などによって、自分の生命の危機が迫っているような状態で作成する遺言です。本人が遺言を作成することが出来なければ、証人となる方の中の1人に、皆が口頭で遺言を伝えて、その人に書いてもらい、そのほかの証人の方全員が署名を行なうことによって、ひとつの遺言書として成立することになっています。
ですから、遺言書を作成するのに証人が3人以上必要となります。全ての証人立会のもとで遺言書を作成します。証人となる人は利害関係者以外となるので、推定相続人が証人とならないように注意が必要です。一般危急時遺言の場合は20日以内に遺言を書いた人の住所地の家庭裁判所で確認の手続きをする必要があります。

〇一般応急時遺言の重要な部分
病気や怪我で生命の危機が迫っている状況である
証人による代筆も可能です
立会証人は三名必要です (利害関係者以外の人)
20日以内に家庭裁判所で確認手続きが必要です

難船応急時遺言

難船危急時遺言というのは、船や飛行機などを利用している時に、かつてなかったような危機的な状況が迫っているような状態で作成する遺言です。
難船危急時遺言書を作成するのにも証人が必要となりますが、一般危急時遺言よりもさらに緊急性が高いので証人の人数が二人となります。自分で遺言を書くことが出来ない場合は証人に口頭で伝えて書いてもらうこともできます。
作成は一般危急時遺言と同様、証人の署名と押印が必要になります。
そして、一般危急時遺言と同じく、遺言の効力については家庭裁判所で確認が必要です。
しかし、一般危急時遺言のような場合の、日数の決まりは、特にありません。

〇難船応急時遺言の重要な部分
船や飛行機を利用中に危機が迫っている状態である
証人による代筆も可能です
立会証人は二名必要です (利害関係者以外の人)
家庭裁判所で確認手続きが必要です

〇家庭裁判所での確認手続きする方法
家庭裁判所で行われる審判手続きとは、提出された遺言が遺言を遺す人の意思によるものだということを確認するための手続きになります。
危急時遺言の場合、この手続きが必要です。
手続きを行う時は以下の書類が必要です。
確認の手続きと検認は異なります。
遺言を執行するには、再度、家庭裁判所で検認を行うことになります

〇必要な書類
遺言確認裁判申立書
申立人の戸籍謄本 (証人の一人が遺言者の利害関係者が申立人となります)
遺言者(遺言を書いた人)の戸籍謄本
証人の戸籍謄本
遺言書の写し
診断書(遺言者が生存している場合)

隔絶地遺言 (二種類)

隔絶地遺言というのは、伝染病など等によって、隔離をやむなく余儀なくされている状態の人、航海や船で長期の期間において、仕事をされている人などが作成するカタチの遺言のことを指します。
しかし、危急時遺言とは少し違い、生命の危機が迫まっている状態まではいかないのですが、交通を絶たれてしまっていたり、陸地から離れていたりなどの理由から、普通方式の遺言を作成することが出来ない状態にある場合ということになります。
また、危急時遺言とは違う部分ですが、命の危機が迫っている状態では無いですから本人が作成する必要があります。ですから、家庭裁判所での確認は必要ありません。
隔絶地遺言には「一般隔絶地遺言」というものと「船舶隔絶地遺言」というものがあります。

一般隔絶地遺言
この、一般隔絶地遺言とは、伝染病などによって隔離を余儀なくされている状態の人、刑務所に服役している人、などが作成する遺言のことです。災害等で被災されている方が一般隔絶地遺言を作成することもできます。
一般隔絶地遺言を作成する場合は警察官1人と証人1人の立会が必要になります。作成した遺言には遺言者と立会人、双方の署名と捺印が必要です。

〇一般隔絶地遺言の重要な部分
行政の判断等により交通手段を断たれている状態である
本人が作成します
立会は警察官一人と証人一人です
本人が作成しているため家庭裁判所での確認は不要です (検認は必要です)

船舶隔絶地遺言
航海中や船で長い期間仕事をされている場合など、陸地から離れている状態の人が作成する遺言のことです。
飛行機の場合は搭乗時間が短いので、この遺言書の作成には該当しないことになります。
この、船舶隔絶地遺言を作成する時には、船長もしくは事務員一人と証人二人以上の立会が必要になります。
作成した遺言には遺言者と立会人、双方の署名と捺印が必要です。

〇船舶隔絶地遺言の重要な部分
航海中など陸地から離れている状態です(飛行機は該当しません)
本人が作成します
立会は船長一人(もしくは事務員一人)と証人二人以上です
本人が作成しているため家庭裁判所での確認は不要です(検認は必要です)

 

 

名古屋相続センター
〒462-0843
愛知県名古屋市北区田幡2-12-14 明治安田生命黒川ビル5階

電 車黒川駅1出口から徒歩約1分

お 車駐車場「One Park黒川駅前」をご利用ください

メールでお問合せメールでお問合せ
電話
LINE@LINE@