遺言書 ② 自筆証書遺言

2021年7月20日

自筆証書遺言とは

 

 

「遺言者がその全文、日付並びに氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と、民法968条にて規定された遺言方法の一つになります。
(2019年の1月に施行された法律で自筆証書遺言の一部である”財産目録”だけはパソコンで作成できるようになりました。パソコンで作成して印刷した財産目録には署名押印が必要です。また、財産目録を作らずに預貯金通帳のコピーを財産目録として添付することも認められています)

特別な手続きを必要としないので、遺言方法としては最も利用されている方法と言えます。
自筆証書遺言は、自分で遺言書を作成する方法です。
紙とペンさえあれば作成できるので費用はかかりません。なので、とても手軽な遺言方法です。
しかし、遺言書を見つけた遺族は家庭裁判所の「検認」を受けて遺言書としての体裁を保っているかの判断を仰ぐ必要があります。このように多少の手間があるということは覚えておいてください。
(検認は法改正により2022年4月から不要になる見通しです)

また、民法968条の規定を満たしていないとその有効性が問われることもあります。
場合によっては無効となってしまう可能性もあるので、多少のリスクを残す遺言方法とも言えるでしょう。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付並びに氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

ここからは、自筆証書遺言をミスなく書く方法や知っておくべきことなども含めて見ていきたいと思います。

 

遺言書の記入例

 

 

だいたいこのような形になるかと思います。何を、誰に、どのくらい相続させるのかという部分を意識して書いてください。
注意することは、『法定相続分でどの程度決まっているのか』、『遺留分を侵害しないように』決めていくというところです。

特に遺留分のことを考えず遺言書を作ってしまうと相続人同士で揉める原因になる可能性が高いです。
また、今現在の財産のみを対象として考えると今から生まれた財産の扱いに困ります。
ですから、『不動産や土地などの分けにくい財産をどう分けなさい』という指示まであるとより良いです。

 

自筆証書遺言の書き方、手順、注意点など

自筆証書遺言を残すために重要な部分を確認していきます。

 

どの遺産を残こすのか明確にする

遺言書を残すということは、自分が亡くなった後の遺産の扱いに希望があるということだと思います。
ですから、自分の遺産に何がどの程度あるのかを正確に把握しておく必要があります。

遺言は遺族にとって大きな影響力を残すものです。
ですから、遺言書に書かれていない財産などがあるとその扱いを巡り争いになるケースも考えらます。

こういった事態にならないように「財産目録」は作っておいてください。
相続人の「遺留分」を侵害しない範囲で、遺産分割をする財産の指定をするのが重要です。

 

相続財産の特定は正確に記載する

何を相続させるかというのも重要ですが、同じように遺言を読んだ人がどの財産のことを指しているのかをわかりやすくすることも大事です。

例えば、土地や不動産を所有していた場合、「土地はナゴヤ タロウが相続すること」とした時に、ナゴヤ タロウは、どの土地のことを指しているのか判断できないという事態が想定されます。

相続人が正確に財産を把握できず、「争続」に発展するということを避ける為にも、土地は「登記簿」、預金は「支店名や口座番号」を記載するなど、誰が見てもわかるようにしておくことが大事です。

 

登場する相続人の範囲を確認する

遺言で遺産分割の割合や、具体的に何の遺産を残こすのかを決めたら、遺言書に登場する相続人が誰なのかを一度整理します。

例えば、被相続人と配偶者、子供が三人おり、遺産分割の割合を指定したいのであれば、通常4人分について明記する必要があります。

例:
財産が現金4,000万円と100平方メートルの土地だった場合
配偶者:現金2,000万円
子供1:現金1,000万円
子供2:現金500万円
子供3:現金500万円、100平方メートルの土地 など

相続の順番は、「配偶者:必ず最初」「子供:2番目」となります。ですから、法定相続分ではなく、遺産分割の割合に差をつけたいの場合は、遺言書に必ず名前を出す、もしくは、「ここに指定のない財産は全て●●に渡す」などの記載をしておきましょう。

 

パソコンは使わず必ず手書きで書く

民法に「その全文、日付及び氏名を自書し」という規定があります。
ですから、手書きでない遺言書は全て無効になります。主な理由としては、遺言書の偽造を防ぐためです。
「自書」以外はすべて認められていません。ということは代筆、音声、映像などは全て無効になりますので気をつけてください。

・何で書くかの指定はありませんが、原則消せないものが良いです
手書きの際に何で書くのかについての指定はないので、鉛筆でも筆でもボールペンでも構いませんが、偽造を防ぐためにも鉛筆などは避けた方が無難です。

・書くときは丈夫な紙に
遺言書はこの紙に書かなければならないといった規定はありません。
ルーズリーフに書いても問題はないですが、破れてしまう可能性が高いので、丈夫な用紙や和紙などに書くことをおすすめします。
ちなみに、縦書き、横書きどちらで書いても大丈夫です。

 

遺言書をいつ記入したかを明記する

自分がいつ遺言書を書いたのかは、必ず記載してください。
日付の書き方は何でも構いませんが、第三者が見た場合でも特定できる位置、読み方で書いてください。
相続人が読めなければ意味がありませんので、誰もが読める文字で記入しましょう。
「20■■年■■月■■日」や、「平成■■年■■月■■日」と、日にちまで特定できるように残すのが重要です。

例えば、自筆証書遺言が複数発見された場合、一番新しい遺言を有効とします。
ですから、遺言者が満15歳に達していること、遺言の意思能力があったかなどを判断する意味もあります。

第九百六十一条  十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十三条  遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

 

署名・押印をする

遺言書は遺言者の署名と押印がないと無効になってしまいます。それを忘れてしまいせっかく書いた遺言書が無駄にならないように「戸籍に記載のある姓名を自筆」するよう心掛けてください。

押印は何でも構いませんが、シャチハタは避けてください。実印で押印しておくのが確実です。

また、遺言書を書いた紙を入れる封筒にも封印してください。
自筆証書遺言の場合、封印がなくても問題はありませんが、あった方が開けていないことの証明になりますので、安心です。

 

夫婦共同の遺言は作れません

民法条、遺言は「二人以上の者が同一の証書で作成することはできない」と規定しています。なので、どうしても二人で残したい場合は共同名義の遺言は避けてください。用紙を分けてそれぞれ単独の遺言書を作成してください。

(共同遺言の禁止)
第九百七十五条  遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

この場合、遺言内容に重複または意見の異なる内容が記載してあるとややこしいことになります。
もし共同で遺言を書きたい場合は、よく話し合い、どちらかの名前を残すのみ大丈夫だと思います。

 

作った後は紛失等に注意して保管してください

遺言書は遺族に見つけてもらう必要があります。
確実に見つけてもらうことが前提となりますので、分かりやすい保管場所にしてください。配偶者には保管場所を伝えておいてもいいかもしれません。
(これまでは、作成した自筆証書遺言の保管は自宅や貸し金庫などに自分で保管しなくてはいけませんでした。しかし、紛失・廃棄・改ざんなどの大きなリスクがあったため、2020年7月以降、法務局において遺言書を保管する制度が創設されました。)
詳しくは法務省のホームページを参照してください 自筆証書遺言保管制度:法務省

 

遺言内容を書き直したい場合

遺言内容を訂正したい場合、遺言者はいつでも修正することが認められています。
該当箇所に二重線を引き、訂正印を押し、近くに書き加えることで訂正可能です。

(遺言の撤回)
第千二十二条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

 

遺言執行者の選任はどちらでも大丈夫です

遺言執行者とは、遺言の内容を正しく実現させるために必要な手続きなどを行う人のことです。主に財産の相続を滞りなく行うことを目的として、信頼できる方にお願いすることがありますが、自分の家族なら問題ないと思えば無理に選任することはありません。
ただし、選任しなかった時にどのような問題が起きるのかだけは、知識として知っておくと良いかもしれません。(後で詳しく説明します)

 

自筆証書遺言を確認する時は検認が必要になります

 

(ただし自筆証書遺言を法務局に預ける場合は不要です)
被相続人の死後に遺族が遺言書を見つけた場合、その場で自筆証書遺言を開けてしまうと、5万円以下の罰金が課せられます。

(遺言書の検認)
第千四条 1 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。
遺言書の保管する者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2  前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3  封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
(過料)
第千五条  前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、または家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

 

なぜ検認作業が必要か

遺言書の検認は、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるという意味があります。遺言内容を明確にして、遺言書が偽造や変造されていないかを確認するための手続として必要なものとされています。あくまでも確認と変造の防止が目的です。
遺言の有効性や無効を判断する手続ではありません。

 

検認の申立先

検認の手続きは、亡くなった被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。

 

検認の申立人

申立人は、「遺言書を保管している人」「遺言書を発見した人」とされています。なので、必ずしも相続人や親族が検認の申立をしないといけないという事はないと思われます。

 

検認に必要な費用

連絡用の郵便切手
収入印紙:遺言書1通につき800円

 

検認申立に必要な書類

家事審判申立書(遺言書の検認と記入)
遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
相続人全員の戸籍謄本
遺言者の子(及びその代襲者)で死亡した者がいる場合はその子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本などになります。

相続人が遺言者の父母・祖父母等の場合
遺言者の直系尊属で死亡している方がいた場合はその直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相続人が不存在・遺言者の配偶者のみ又は遺言者の兄弟姉妹及びその代襲者の場合
遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
遺言者の兄弟姉妹に死亡した方がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
代襲者としての甥、姪に死亡した方がいる場合、その甥または姪の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

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