申告漏れに気を付けたい遺産~デジタル資産の相続~

2024年5月8日

プロローグ

デジタル化が主流になってきた昨今。

最近では「キャッシュレス」が当たり前の時代になってきました。

身近なものでもネットバンクや電子マネーなどがあり、お金の運用もネットでFXや株式(ネット証券)、 暗号資産(仮想通貨)の取引をしている方も少なくないでしょう。

 

前回は「デジタル資産の種類と整理」を解説しましたが、今回はデジタル資産の中でもFX、株式(ネット証券)、暗号資産(仮想通貨)といった資産の相続について解説していきます。

 

 

FX(外国為替証拠金取引)

 

最近人気がある投資にFXがあります。

FXの大まかな仕組みとして、2ヶ国の金銭を売買し為替差益を運用しますが、FXは信用取引やレバレッジができるため、預けたお金の何十倍もの取引ができる場合があります。

信用取引やレバレッジを利用すると利益は大きいですが、ある日突然大きな損失が発生する可能性もあります。

※信用取引…証券会社に委託保証金を担保として預け、買付資金や売付証券を借りて売買し期限内に返済する取引

※レバレッジ…証拠金を担保に資金以上の取引ができる仕組み

 

被相続人がネットでFXを行っていた場合

被相続人がネット上でFXを行っていた場合、郵便物なども届かない為発見が遅れてしまうパターンもあり、その間に大きな損失が発生し相続放棄をしなければならない事態になる可能性もあります。

被相続人のFX取引が分かった時点で被相続人がいつ亡くなったかを連絡します。

連絡があった時点でFXの口座は凍結され取引不可能となりますので速やかに連絡することが必要です。

また、相続が開始されたことを会社に連絡すると、相続手続きに関する書類が送付されます。

相続手続きに必要な書類は会社により異なりますが、一般的には以下の通りです。

FXは名義変更ができません。

FXの所有者(被相続人)に残高があった場合は相続人が新たに口座を作り、その口座に残高を移すことになります。

相続の手続きは口座開設が必要となりますので早めに手続きを行いましょう。

 

 

株式(ネット証券)

 

ネット証券は店舗が無く、インターネット上で取引を行います。

無店舗型なので様々な手続きもネット上か電話で行うことになります。

相続に関する手続きでは、被相続人が亡くなったことを証券会社に連絡します。

死亡届が受理された時点で株式の売買が不可能になります。

その後、相続手続きのための書類が送付されますので、書類に記入、必要書類も揃え返送します。

残高証明書の申請・取得を行い、対象の株式を相続する相続人が確定してから名義変更手続きを行い、相続人は証券口座を新設し株式の移管手続きを行います。

相続手続きに必要な書類は一般的に以下の通りです。

ネット証券の相続手続きは郵送でのやり取りがメインとなるため時間が必要です。

また、ネット証券はスマホやパソコンで完結できるため、家族が存在に気付かないまま相続税の申告をした際には「申告漏れ」になってしまうため、所有者(被相続人)は生前に家族に知らせておくか、解約して現金化することも検討しましょう。

 

 

暗号資産(仮想通貨)

 

暗号資産(仮想通貨)といえばビットコインが有名です。

他にも、イーサリアム、リップルといった様々な暗号資産がありますが、これらの商品は相続の対象となる資産です。

暗号資産もFXやネット証券と同様スマホやパソコンで完結するため郵便物がありません。

相続人は、画面上やメールなどで初めてその存在を知ることもあり得ます。

また、知らないまま放置してしまうと相続税の申告漏れとなり再度相続税の申告を行わなければならない事態もありますし、取引先の会社が倒産してしまうこともあります。

 

相続人が暗号資産の取引を確認した場合は、被相続人が取引していた取引所を調べ被相続人が亡くなったことを伝えます。

相続人の本人確認がされた時点で被相続人の口座は凍結されます。

また、取引所は相続手続きに必要な書類を電話やメールで教えてくれますので、必要書類を揃え取引所に送付します。

書類が適切に処理された後暗号資産の払戻しが行われ、払戻しが完了した時点で被相続人の口座が解約されます。

※相続手続きに必要な書類は取引所により異なりますので、該当する取引所でお尋ね下さい。

 

ログインIDやパスワードの保管

 

デジタル資産のIDやパスワードについては、家族間であっても知らないという人は少なくありません。

ご自身に万が一のことがあった場合に備えてIDやパスワードは家族が分かりやすいようにしておくことも大切です。

保管の方法には、エンディングノートやメモ用紙、ノートに記入して自宅の机や金庫などに保管するといった方法がありますが、セキュリティー面が気になるという方は、エンディングノートやメモにはスマホやパソコンのログインIDとパスワードのみを記入し「スマホの中に詳細あり」「パソコンの○○フォルダ確認」「パスワード管理アプリあり」などを書き添え、デジタル資産の詳細と区別することでセキュリティーのリスクは最小限に済むでしょう。

※遺言書に記載する方法もありますが、パスワードを変更した際などに遺言書を再度作成しなければなりません。

 

エンディングノートについての詳細はコチラをご参照下さい。↓

リンク(終活とエンディングノート~遺言書との違い~)

 

 

エピローグ

 

今回は申告漏れに特に気を付けたいデジタル資産をご紹介しました。

デジタル資産は電子データのみでやり取りされることが多く、所有者がログインIDやパスワードを登録して画面上で管理します。

そのため、所有者に万が一のことがあった場合相続人は途方に暮れてしまうケースも多くあります。

また、デジタル資産を知らないまま相続手続きを行い後にデジタル資産の存在が発覚した場合、相続のやり直しや遺産分割のやり直しなども発生してしまいます。

デジタル資産は遺された相続人が分かりやすいように、生前に準備しておきましょう。

また、法の専門家(弁護士・司法書士等)に相談して遺言書を作成する、死後事務委任契約を結ぶなども検討してみましょう。

 

死後事務委任契約についてはコチラをご参照下さい。↓

リンク:(死後事務委任契約とは)

 

 

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