故人が健在だった時に行った貢献が評価される? 寄与分という制度

2024年11月6日

プロローグ

相続に関係する言葉には様々なものがありますが、そのうちのひとつである「寄与分(きよぶん)」という言葉を聞いたことはありますか?

寄与分とは相続財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人に対して、貢献度の高い相続人に認められる相続の増額分」のことで、民法904条の2第1項により認められている制度です。

しかし、寄与分は遺産分割協議の際にトラブルになりやすい原因のひとつにもなっており、寄与したことを証明することが難しく、相続人同士が不仲になってしまうこともあり得ます。

相続人の間でこのような悲しい事態にならないよう、寄与分がどのようなものかを正しく理解しておくことが大切です。

今回は、相続人が特別な貢献をした際に法定相続分以上の財産を相続できる「寄与分という制度」について解説します。

 

寄与分とは?

「寄与」とは分かりやすく言うと貢献です。

被相続人の生前に特別な貢献をしたと評価された相続人は、相続分にプラスして寄与分を受け取ることができます。

寄与分に該当するのは、配偶者・子や孫など直系卑属・父母・祖父母など直系尊属・兄弟姉妹の相続人で、寄与分には家事従事型・金銭出資型・療養看護型・扶養型・財産管理型の5つあります。

寄与分5つの種類
家事従事型 被相続人が経営していた事業に対して行った労働によって財産の維持・増加に貢献した

例えば、被相続人が営む農業をほぼ毎日無償または、無償に近い状態で手伝った場合などが家事従事型に該当する可能性があります。

金銭出資型 被相続人の事業に出資したり、不動産の購入資金を援助するなど財産上の利益に貢献した

例えば、被相続人に家を建てるための費用を提供した場合などが金銭出資型に該当する可能性があります。

療養看護型 被相続人の療養看護をした

例えば、長女が被相続人を24時間介護するために仕事を辞めて従事した場合などが療養看護型に該当する可能性があります。

※介護士いない時の数時間などは対象になりませんので注意が必要です。

扶養型 被相続人を扶養した

例えば、相続人が被相続人の生活の面倒をみていたため、被相続人は出費なく生活ができ財産が維持された場合などが扶養型に該当する可能性があります。

財産管理型 被相続人の財産管理をすることによって財産の維持や増加に貢献した

例えば、被相続人が持つ賃貸不動産の管理や、被相続人の不動産の売却を行う際に立地交渉や売買契約に尽力した場合などが財産管理型に該当する可能性があります。

※法律上では、被相続人の病院の送迎をしていた・食事の世話をしていた・介護士が訪問する合間での手伝いなど「同居している親子であれば当然」と判断される場合、寄与分として評価されません。

また、寄与分を請求できる期限は2023年の法改正により、相続開始から10年を経過すると主張が認められなくなるため10年以内に請求を行う必要があります。

 

寄与分として評価される要件

寄与分として評価されるには、いくつかの要件を満たす必要があります。

・法定相続人であること、また法定相続人本人の寄与(貢献)であること。

・寄与が被相続人にとって必要なものであった。

・被相続人に対して長期間、無償で特別な貢献をしていた(寄与分の請求が適切である)。

・被相続人の財産の維持・増加に対して直接的な貢献をしたこと。

などが寄与分を評価される一部分となります。寄与分として評価される要件は種類によって異なります。

 

寄与分を請求する場面

相続に関する具体的な内容などによって異なりますが、相続人の間で寄与に対する評価をしてもらう方法がありますので遺産分割協議の中で主張しても良いでしょう。

遺産分割協議の話し合いで決まらない場合は家庭裁判所での調停・審判で決めることになります。

【point】

寄与分は認められることが非常に困難です。

また、寄与分の額や割合はケース毎に異なり、家庭裁判所での審理や合意によって決まります。

寄与したことの裏付けが重要となりますので、寄与行為を立証できるような資料や寄与行為を証明できるものなどを揃えておくことも大切です。

※寄与分の計算は相続人の間で公正に割り振りされますので複雑な手順で進められます。

寄与分を請求する際は法律の専門家(弁護士・司法書士等)と相談しながら進めることをお勧めします。

 

 

特別寄与料

2019年7月に施行されたこの制度は、被相続人の療養看護を相続人以外の人が行った場合に寄与料を請求できる制度です。

特別寄与料を請求できるのは、6親等内の血族・3親等内の姻族となっており、子や孫の配偶者など相続人に入らない人が被相続人に特別な貢献を行った際に請求できます。(民法第1050条1項)

【point】

特別寄与料は看護や介護・その他の労務を行った場合のみとなっており、被相続人に財務上の利益(事業の出資など)で支援した場合などは該当しません。

特別寄与料の請求は、相続の開始および相続人を知った日から6ケ月間となっています。

また、特別寄与料を受け取った場合、相続税が2割加算となります。

 

 

エピローグ

寄与分は前提として寄与分を請求したい人本人自ら主張し、相続人に合意してもらわなければなりません。

たとえ寄与行為を行ったとしても何の主張も行わなければ寄与分は無かったこととして相続分が決定してしまいます。

寄与分を主張する場面には、遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判がありますが、最初に行われる遺産分割協議は相続についての具体的な話し合いとなりますので、寄与行為を行った分を相続したい旨を他の相続人と話し会いましょう。

この時、マナーを守った範囲内で寄与分の請求をすることが大切です。

また寄与分を実現するためには、被相続人が生前に遺言書を作成することが理想です。

遺言書の「付言事項」に寄与した相続人に対しての感謝の気持ちと、具体的な相続分を記しておくことも大切な方法となります。

※付言事項とは、願い事を伝えたり、感謝の気持ちなどを記す文章のことです。

遺言書についての詳細はコチラをご参照下さい。↓

リンク:(法的な効力を持った書類「遺言書とは」)

 

自身が寄与分に該当するのでは?と思われる方は、弁護士や司法書士など法律の専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。

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当事務所は、相続に強い司法書士事務所として、専門的な知識と寄り添う想いであなたにとってより良い相続になるようにサポート致します。

 

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