家族信託とは – その2(Part2)

2021年5月25日

~Part1からの続きPart2~

Part1の続き

 

家族信託と遺言信託の違いとは

 

「財産を家族に託す」と聞くと、「遺言書」をまず連想する人も多いのではないでしょうか。
遺言書を使った「遺言信託」も財産を管理する1つの方法となりますが、「家族信託」とは少々意味合いが異なってきます。主な違いは次の2つです。

 

▶「家族信託」は「生前の財産」を管理できる

「家族信託」は遺言信託と違い、“生前の財産”を管理することが可能です。
遺言信託は、遺言者が亡くなった時点から、様々な効果が発生します。
しかし、「家族信託」の場合においては、契約を締結した時点から効果が発生することになります。

例えば、親が財産について遺言書を作成しており認知症などを患った場合は、遺言信託の効力が発生せず、その財産の管理や運用は財産の持ち主(つまり親)が行なわなくてはなりません。

一方、「家族信託」により子どもを「受託者」として指定しているなら、親の判断能力がなくなったケースの場合においても、子どもが、財産の管理や運用をそのまま継続しつつ行なうことができます。
不動産の場合であれば、子どもの判断によって売却することも可能であり、相続対策にも有効となります。

 

▶財産の相続を何代にも渡って指定できる

「家族信託」は、遺言書と同じように財産の相続人を指定することができます。
そして、「家族信託」では、信託したその財産を継承する人を前もって指定することができるというだけではなく、何代にも渡って財産を継承する人を指定することができます。

「遺言信託」では、次に財産を相続する人にしか指定することができません。
そこで、「家族信託」を活用することによって、直系血族以外に財産が流出してしまうことを防ぐことが可能になります。

 

家族信託と任意後見制度の違いとは

 

「任意後見制度」とは、認知症等での影響から判断能力が低下してしまった人に、「後見人」と呼ばれている、財産の管理の支援者をあとから付けることができるという制度のことです。
「誰かに財産を任せる」という点では「任意後見制度」と「家族信託」は同じように見えます。
しかしながら、「任意後見制度」という制度はかなり制約が多く、「家族信託」よりも、たいへん使いづらい制度となっているのが現状です。

 

①「任意後見制度」はできることが少ない

「任意後見制度」は、できることが限られています。
後見人の権限は、財産管理や法律行為の代理、身上監護のみであって、財産を運用したり、新たな投資をしたり、財産の処分等を行なうことができません。

 

②「任意後見制度」は裁判所の監督を受ける

後見人は、家庭裁判所の監督を受けます。
また、定期的に、裁判所、また後見人の監督人に対して、後見事務というものを報告しなければなりません。
報告を怠った場合は解任になる可能性があります。

 

家族信託をするメリットとは

 

「遺言信託」や「任意後見制度」と比べて「家族信託」による財産管理はたくさんのメリットがありますのでいくつかご紹介します。

 

▶判断能力低下による財産管理のリスクを回避できる

認知症を患らってしまい、判断能力が低下したケースの場合、本人の意志というものが確認できないために、資産の管理や売却ができなくなり、実質的には「資産凍結」という状態に陥ってしまうケースの場合も多いのです。

「家族信託」を利用すれば、信託した財産については「委託者」への意思確認手続きの必要がないため、「受託者」によって財産の管理や処分をスムーズにすることが可能となってきます。

 

▶遺言書の代用になる

「委託者」は契約の終了、(つまり委託者が亡くなったとき)のあとにおいて、誰がその信託財産を継承するのかを指定することが可能です。
これにより、「家族信託」というものが、遺言書の代用物としての権限を得ることができるのです。
また、「家族信託」と「遺言書」が両方存在するケースの場合は、「家族信託」のほうが優先されることになります。

 

▶財産の相続を何代にも渡って指定できる

先に紹介したとおりなのですが、次への相続だけで終了するのではなくて、二次相続以降の資産の継承先までも指定することさえできます。

 

▶不動産の共有を回避できる

財産の相続を何代にも渡って指定できるという特徴があるため、不動産の共有化という状況を避けることができます。

相続人の指定がないという種類の不動産は、複数の相続人によって、持分の共有において相続されるケースが多くあります。
しかし、持分の共有不動産のケースの場合、その不動産の管理・運用・処分等について、共有者全員の同意がどうしても必要なためにトラブルになるケースの場合が多く、せっかくの不動産が有効活用されないというケースの場合もあります。

「家族信託」という制度を使って、前もって継承者というものを指定しておくことで、不動産の持分の共有化を回避することができます。

 

家族信託をする際の注意点

 

「家族信託」という制度は、「遺言信託」とか「任意後見制度」よりも比較的自由度が高いため、デメリットのようなものに該当するものはないかもしれませんが、「家族信託」を利用する場合においては、注意したほうが良いことがいくつかあります。

 

▶所得税の申告で損益通算ができない

所得税の申告において、信託財産とした不動産の中から生じてしまった損失というものは、他の所得と損益通算することができません。
この損失については実質なかったものとして取り扱われてしまうため、翌年へと損失を繰り越すことができないのです。

また、1つの不動産に1つの信託契約などを交わし、複数の信託契約が仮にあるケースの場合には、異なる信託契約においての不動産所得の損益通算というものはできないことになっています。

しかし、同じ中身の信託契約内に関する物件については、損益通算をすることができます。

 

▶身上監護がない

「任意後見制度」には「身上監護権」があり、後見人は原則、被後見人の心身の状態とか、生活状況に対して配慮をしなければなりません。
後見人は全般的に、被後見人の住まいとか医療、または介護などの責任をみな負っています。

一方、「家族信託」という制度に関しては、「身上監護権」というものが存在しないため、生活や医療については、全般的に家族に頼ることになっています。

 

▶遺留分を侵害するおそれがある

配偶者や子などは、民法による規定により、一定の割合の財産を相続できるという権利があります。
これを「遺留分侵害額請求権」と言います。

「家族信託」を行なったことで、この規定により、他の相続人の遺留分を侵害するケースが生じてきます。もし相続人の遺留分の無視をした家族信託を締結したということになると、将来のトラブルの元になる可能性は高いです。

 

▶税務署への提出書類が増える

「家族信託」を締結した場合においては、毎年1月31日までに「信託の計算書および合計表」の提出が必要です。(収益が3万円を越える場合)
その他に、信託設定及び変更時に「信託に関する受益者別調書および合計表」の提出が必要です。

 

家族信託の手続き

 

多くのメリットのある「家族信託」ですが、「家族信託」を行なった場合の手続きは、「遺言信託」と比べると、かなり複雑になっています。例えば、具体的な手続きのケースをご紹介します。

 

▶手順① 目的の明確化

「家族信託」を行なう目的を、まずは明確にしましょう。
何のために「家族信託」というものを行なうのか、自分自身の財産をどのように運用したいのか、ということを明確にしていくことが大切な点です。

<目的の具体例>
判断能力が低下してしまうおそれがあるので、事前に、前もって自分の財産を家族のために託しておきたい。

 

▶手順② 信託の内容の決定

信託の内容を決めます。
また信託の方法は、「家族信託」というもの以外に、「任意後見人制度」というものや「遺言信託」などがありますから、専門家も交えながら、その「家族信託」が本当に適切かどうかを検討することをおすすめしたいと思います。

信託の内容において決めなければならないことは、以下のとおりです。

「信託の目的」
「委託者」
「受託者」
「受益者」
「信託財産」
「信託期間」
「残余財産の帰属先」
「場合によっては、受益者代理人、受益者指定権者や信託監督人、信託管理人など」

 

▶手順③ 信託契約書の作成、公正証書化

決定した信託の内容を契約書にします。
信託契約書は1つ1つの条項が重要になりますので、専門家に依頼することをおすすめします。

作成した信託契約書というものは、公証役場において、公正証書にすることができます。
これは、公正証書にしておくということで、後あとの争いというものを避けることができ、また、金融機関において、信託口座の開設手続きも、たいへんスムーズに行なえますので、費用はかかるかもしれませんが、こういう場合、公正証書化することをおすすめします。

 

▶手順④ 不動産の名義変更

信託契約に、もし不動産が含まれている場合には、法務局において、不動産の名義変更を行なう必要があります。
司法書士などの専門家等に依頼してみるとよいかもしれません。

 

▶手順⑤ 信託専用口座の開設

財産の管理を行う「受託者」は自身の財産と信託の財産を区別しなければならないため、「信託専用口座」というものを開設しなければなりません。

この「信託専用口座」の開設に関しては、各金融機関により取扱いが異なりますので事前に確認しましょう。

 

家族信託にはどれくらい費用がかかるか

 

「家族信託」にかかる費用は、“どれくらい専門家に依頼するのか”、また、“信託する資産の価値”等、により大きく変わってくることになります。ここにおいては、標準的な費用のケースの場合をご紹介します。

 

▶専門家への費用(相談および書類作成)

最低30万円くらいから、信託する財産の1%が報酬の目安になります。5,000万円の資産ならば、50万円が目安になってきます。
これに、書類の作成費用が、10万円~20万円くらい加算されます。

 

▶公正証書費用

公正証書にする場合に必要な費用です。費用は、信託財産なら、5,000万円以下の場合は3万円くらい、1億円以下の場合においては、5万円くらい程度が目安となります。

 

▶司法書士への登記報酬

信託財産がもし不動産の場合には、不動産登記が必要になってきます。
報酬は、信託財産というものの、固定資産評価額によって違ってきますが、目安としては、固定資産税評価額が、5,000万円の場合には、10万円くらい程度です。

 

▶登録免許税

信託財産を登記する場合には、必要になってきます。
土地の場合は固定資産税評価額の0.3%(令和3年3月31日まで)、建物の場合は固定資産税評価額の0.4%となります。例えば、評価額、5,000万円の土地である場合、15万円くらい程度が目安となります。

 

エピローグ

 

今回は「家族信託」についてご紹介しました。

「家族信託」は、「遺言信託」とか「任意後見制度」に比べると、比較的自由度が高く、何代にも渡って相続人を指定できるため相続対策として効果的です。

また、「家族信託」という制度を利用することで、その財産の持ち主の判断能力の低下によって、資産凍結のリスクが生じてしまうことを避けることができます。
しかし、十分な知識がないまま信託契約を行なってしまうと、たいへん危険な状況に陥ってしまうこともあり得ます。

そんな時は、経験豊富な専門家に依頼し、将来の道筋をきちんと立てた上で、また、ぜひ家族とよく話し合ってから「家族信託」を利用することをおすすめします。

 

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